第1章 ─ しのぶれど ─
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「………………は」
少女の口から、子爵が借金を苦に自害なされたと聞いた時言葉を失った。
三年前に母親も亡くなり、身よりもなく、残りの借金を返すために遊郭へ連れていかれたのだという。
知らなかった……。
私がもう少し早く気付いていれば、何が総司さんの役に立てたのかもしれない。
こんな小さな少女に辛い思いをさせることも……
そんな後悔と消失感が同時に襲ってきた。
先程までの楽しく明るい口調とは真逆の、悲痛な声で私に頭を下げる少女に胸が締め付けられた。
私に感謝などしなくていい、恩を返そうだなんて思わなくていい、私は君の父に何も出来なかったのだから。
そう告げても震える身体を起こすことはしない。
何を言えばこの少女の心を軽くできるのか。
気の利いた慰めの言葉など、出てこない。
せめてその小さな震えを止めたくて、そっと肩に触れた。