第1章 ─ しのぶれど ─
時任さんの静かな眼差しは、いつも穏やかで優しく心を溶かしてくれる。
何を言っても受け入れてくれそうな包容力があって、きっと使用人さん達もそれが解っているから、こんなにも伸び伸びと楽しそうなのだ。
この先ずっと、時任さんみたいな人と一緒にいられたら……私はきっと、とても幸せだろう。
「…皆さん、いい人ですね。本当の家族みたい」
ポツリと呟く。
私はここで上手くやれるだろうか……
不安なことはあるけれど、もし時任さんが望むなら、この家の人間として恥じないように礼儀作法や勉学をちゃんと頑張ろうと思う。
「君もここの家族だよ」
そう言って柔らかく注がれる視線は、やっぱりどこまでも優しくて、溺れてしまいそうだった。