第1章 ─ しのぶれど ─
ひと通り経緯を説明し終わった後に、そっと周囲の反応を窺ってみる。
すると……
「………なんと、おいたわしやお嬢様…まだお若いのに苦労なされて……」
ヤチヨさんがハンカチを握り再び涙を流す。
それを仕切りに他の女中さんも、シクシクと泣き出した。
「クソ……もう聞いてられねぇ……旦那様はやっぱり立派はお方だ。疑って申し訳ない!」
遂には三上さんまで顔に手を当てて泣くのを我慢しているみたいで、やっぱりいい人のようだ。
部下のお二人も涙を拭っている。
そんな中、お付きの男性だけは人情深い使用人さん達をドン引きした目で見つめているけど。
(色々と温度差がすごい………)
ははは……と苦笑していると、私だけに聞こえるような声で時任さんが囁く。
「ありがとう。おかげで誤解がとけたよ」
それに私は、いいえ。と答えるように笑顔を向けた。