第7章 ─ きみがため ─
髪を撫でていた手がいつの間にか耳に触れて、離された唇が耳朶を甘噛みすると
「ひゃぁ………」
不意に変な声が出た。
思わず目を開けて身体を引けば、潤んだ視界の中で旦那様と見つめ合う。
「あ…の、そこは……耳は、駄目です……」
くすぐったいのを通り越して、変な感じになる。
雰囲気が壊れると嫌なので、正直に告げると旦那様はからかうように口角を上げた。
「どうして?」
さっきも思ったけど、今日の旦那様いつもより強引……というか、意地悪だ。
だけど、そんな旦那様も……嫌じゃない……ような。
「……変な、感じが…します……」
「そう。たとえば、どんな?」
囁かれて、濡れた舌先が耳の形をなぞっていく。
ぴちゃ…ぴちゃ…と艶かしい音が鼓膜を擽る。
「ゃ………やめて…くだ、さ……」
「それは答えになってないなぁ」
思わず逃げようとするけれど、押さえ込まれて耳の中まで舌が入ってきた。
艶かしい音と吹き込まれる息に力が抜けていく。
「ぁあ……も、わからな…い…で、す……」
途切れ途切れに言えば、最後は吐息となって消えていく。
短いような、長いような責め苦の後、ちゅっと軽く音をさせてようやく耳を解放してくれた。
「は耳が弱いんだね。次からは嫌ではなくて、気持ちいいと言ってごらん」
「…気持ちい、い……?」
「うん。それは変じゃなくて、気持ちいいんだよ」
そうなんだ……と、回らない頭で理解する。
弄ばれた耳の余韻か、お腹の奥がくすぐったい。
ようやく落ち着いたかと思えば、旦那様が私の後ろに手を伸ばして浴衣の帯を解いた。
シュルっという音と共に襟が開く。