• テキストサイズ

*喋よ花よ*-大正色恋浪漫-

第7章 ─ きみがため ─




「ねぇ、それは知らずに言ってるの?それとも私を誘ってる?」

「……え?…分からない、です……」

「そうか。は初めてだものね」


そう言って立ち上がった旦那様は、奥の座敷へと向かった。

襖を開けたその先に、布団が二組ぴったりとくっつけて敷いてある。

暗い部屋の中に、燈籠のぼんやりとした明かりだけが灯っていた。


「………………っ」


この部屋に来た時と同じように動けないでいると、旦那様が戻ってきて私を不意に抱き上げる。


「わっ…!」

「落ちないように、掴まってなさい」


首に手を回すように言われて素直に従えば、旦那様が先に布団に腰を下ろして、私を膝の上で抱っこをする体勢になった。


「だ、旦那様……!?」

「んー…それもいいけど、今は下の名前で呼ばれたいかな」

「へ…………」

「名前」

「………や、弥一…さん…?」

「うん。いい子」


ポンと、頭を撫でられる。

普段から呼び慣れていないのに、その上こんな状況だとなおさら恥ずかしい。

思わず目を瞑ってしまえば、その瞼に柔らかい感触が落ちた。


「ん………」


額にも啄むような口付け。

その優しさに緊張を解してくれようとしているのが分かる。


「口を開けて」


そう言われておずおずと口を開けば、旦那様の舌が口の中に入ってきた。

くちゅ、くちゅ、と水音が立つ度に吐息が漏れる。



/ 132ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp