第7章 ─ きみがため ─
「ねぇ、それは知らずに言ってるの?それとも私を誘ってる?」
「……え?…分からない、です……」
「そうか。は初めてだものね」
そう言って立ち上がった旦那様は、奥の座敷へと向かった。
襖を開けたその先に、布団が二組ぴったりとくっつけて敷いてある。
暗い部屋の中に、燈籠のぼんやりとした明かりだけが灯っていた。
「………………っ」
この部屋に来た時と同じように動けないでいると、旦那様が戻ってきて私を不意に抱き上げる。
「わっ…!」
「落ちないように、掴まってなさい」
首に手を回すように言われて素直に従えば、旦那様が先に布団に腰を下ろして、私を膝の上で抱っこをする体勢になった。
「だ、旦那様……!?」
「んー…それもいいけど、今は下の名前で呼ばれたいかな」
「へ…………」
「名前」
「………や、弥一…さん…?」
「うん。いい子」
ポンと、頭を撫でられる。
普段から呼び慣れていないのに、その上こんな状況だとなおさら恥ずかしい。
思わず目を瞑ってしまえば、その瞼に柔らかい感触が落ちた。
「ん………」
額にも啄むような口付け。
その優しさに緊張を解してくれようとしているのが分かる。
「口を開けて」
そう言われておずおずと口を開けば、旦那様の舌が口の中に入ってきた。
くちゅ、くちゅ、と水音が立つ度に吐息が漏れる。