第6章 ─ ちぎりきな ─
そんな私に、旦那様が動揺したように首を振る。
「違う。邪魔なんかじゃない……迷惑だなんて、一度も思ったことはないよ」
「じゃあ、なん、で……」
俯いたまま、膝の上で握り締めていた拳を、旦那様の手がふわりと覆った。
まるであの時と同じだ。
旦那様と出会った日、震える私をこんな風に慰めてくれた。
だけど今は、その温かさが痛い。
「…旦那様は……私のことが、嫌いになってしまったのですか……」
「そんなことあるわけない。大事だよ。何にも代え難いほど、は私の大切な子だ。だからこそ、幸せになって欲しいんだ」
「…なら、一緒にいて下さい……私は、旦那様としか幸せになれません」
そう呟けば、旦那様はどこか苦しそうに私の名前を呼んだ。
「……が私のことを慕ってくれているのは、凄く嬉しいよ。けれど、私では最後まで君を守ってあげられない。そればかりかにまた寂しい思いをさせてしまう」
一つ一つゆっくりと、まるで幼い子供に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「私がいなくなった後も君は優しい子だから、きっと私のことを想って泣いてくれるだろう。けれど、それが辛いんだ。にはずっと笑っていて欲しい。誰よりも幸せになって欲しい。でも、それを叶えることは私にはできない……君と長い年月を過ごして、一緒に年老いてくれる相手を見つけなさい」
越えられない年齢差、そんなの分かってる。
旦那様がずっと傍にいてくれるわけじゃないことも、若い夫婦よりも一緒に過ごす時間が短いことも。
旦那様が言うように、残された私は旦那様を思って悲しむだろう、寂しいと思うだろう。
だけど、それでも………