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呪術夢短編集

第2章 呪いは胎児の夢を見る(真人 R-15)


※ネームレスです。あと気持ち悪い真人くんがいます。


 薄暗い部屋の一室。一糸まとわぬ姿の真人は、同じく産まれたままの姿である女の腹に耳を寄せていた。女の腹は白く、平坦で、そして柔い。そこに入ってある物を夢想しながら、真人は甘えるように頭を擦り付けていた。

「はあ…君のここに入りたい…」

 熱に浮かされたような声で真人はそう呟く。すると女は、彼の頭を撫でながら「良いですよ。貴方さえ良ければ何時でも入っていらして」と、極めて優しい声色で返した。

「ありがとう。楽しみだなあ…君に産み直してもらう日が来るの…」

 女の返答に子供のような純粋な笑顔でもって感謝を告げると、そのまま 女の下腹部…丁度子宮が入っているであろう場所へと口付ける。女は「やだ、擽ったい」と笑いながらもその行為を止めはしなかった。これが人間ですらない怪物である彼の、自分に対する最大の愛情表現だと知っていたからだ。

「俺、好きなんだよ君の胎内(ナカ)。俺の全部を受け入れてくれて…包み込んでくれて…すごく気持ちがいい」
「当たり前ではありませんか。貴方の為の場所なのですから」

 先程までの行為を思い返しながら、更に熱っぽく真人が言葉を紡げば、女は優しく彼の髪を撫で付け、苦笑しながら返していく。この苦笑は、当たり前の事を改めて言われたことにで引き起こったものだ。


 少々どころか、人間として大事な部分の頭の螺子ですら、産まれた時から外れていたこの女は、普通の人間では到底受け入れられないことを、さもそれが当然であるかの如く受け入れる。それが誰であっても関係ない。例え、それが目の前で人間を殺した自分でさえだ。
 どんな存在でも受け入れ、惜しみなく愛を与えるこの女は、ある意味でこの世に顕現した「聖母」であった。その価値観が「死こそ人類の救済である」という破滅的思考に満ち溢れてさえいなければ、ある意味どころか正真正銘の「聖母」として讃えられていたかもしれない。でも、そういう破滅的思考に満ちている所が、却って真人には好ましかった。今まで会ってきたどんな人間よりも、この女の思想は未知で理解不能で、そして何より美しかったからだ。
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