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呪霊に育てられた女の人生

第1章 始まり


「えっ……」
 と驚き、思わず目を瞑ってしまう。しかし痛みも衝撃も襲ってくることはなく、恐る恐ると目を開けるとそこには私の前に立ち塞がるようにサナちゃんがたっていた。光の玉はサナちゃんが食べてしまったようで、血が垂れる口元から白い煙があがっている。
「サナちゃん! 血が出てる……酷いお兄ちゃん、なんでこんなことするの!?」
 口元の血を袖口で拭う。サナちゃんはキュウウ……とか細い声をあげながら私にすりすりと頬擦りをした。

「呪霊が人の子を守る……か。面白い」
そう言うと、彼はまた手を上にあげる。
今度はさっきよりも大きい光る球が生まれる。それをサナちゃんに向けて投げようとした瞬間、私は咄嵯に叫んだ。
「やめて!!!」
ピタリ、とその動きが止まる。
「それ以上サナちゃんを虐めたら……許さないから」
 今度は私がサナちゃんの前に立ち塞がる。

「皆で、お兄ちゃん殺すから……」
 ギロリ、と彼を見上げながら「皆、助けて」と叫ぶ。すると何処に隠れていたのか、沢山の呪霊達が窓辺に現れ甲高い声をあげながら私とサナちゃんを取り囲む。
「へぇーすごい数だねぇ」
そう言いながらも、彼の表情は一切変わらないまま。むしろ余裕さえ感じる程に落ち着いていた。

「呪霊を式神のように使役できる術師がいるなんて初耳だけど……凄いな。その数を従えて意識をたもってるなんて」

「皆はを守ってくれるお友達。だからも皆を虐める人は許さない」
 暫く睨み合いが続く。やや間があって。

「わかった」
 男がポンっと掌をうつ。

「ごめんね。虐めるつもりだったわけじゃないんだけど、君の能力が未知数過ぎて試しただけなんだ」
「試す?」
「うん。だから、もう何もしないよ。サナちゃん、だっけ? 彼女にも謝るよ。ごめんなさい」

ペコリ、とお辞儀をする男を見て、私はホッとする。
私が警戒を解くと同時に、周りにいた友達も1人また1人と空気に溶けて消えていく。最後に残ったのは私とサナちゃんだけ。


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