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呪霊に育てられた女の人生

第1章 始まり


次に目を開けると、そこは見慣れた自分の家のリビングだった。
え、とキョロキョロと見渡しても彼女の姿は見えない。
あれ?と不思議に思っていると後ろの方でドサッという音がしたので振り返ると、そこには血だらけで倒れている両親の姿が見えた。
何が起こったのか分からずに呆然としていると、背後でカサという小さな音と共に何かが動く気配を感じた。
恐ろしくなって振り向くと、そこにいたのは大きな化け物だった。
鋭い牙に長い爪。
そしてギョロリとした大きな目が私を捉える。
 でも何故か不思議と怖くなかった。

「お父さん…お母さん…」
 ピクリとも動かない両親だったモノ。それを見下ろしながら、何故か心の中は穏やかだった。

「お前がしたの……?」
 目の前にいる化け物に呟くように問い掛ける。化け物は大きな口からヨダレをだらだらとこぼしながら、こくりと大きくうなづいた。

「そっか……」
両親が死んでしまったことを理解しても涙が出てくることはなかった。それよりも、この化け物はどうして私を食べようとしないのだろうと疑問に思ったことを覚えてるわ。
だって普通なら真っ先に食べるでしょう?
でも化け物はまるで猫の様に喉を鳴らしながら私の周りをぐるりとうろうろするだけだった。
「もしかして……サナちゃん?」
私が声をかけると、嬉しそうに目を細めて頬ずりをしてくれる。その仕草が可愛くて思わず頭を撫でてしまった。
「ありがとう」
そう伝えると彼女は満足そうにして姿を消した。
これが呪霊と呼ばれる存在との出会いだった。

***
「……それが私とサナちゃんとの出会いだったの」
 ニコニコと語り終えた私を、乙骨くんは信じられないという表情をして見ていた。
「それって……つまりはその呪霊に取り憑かれてるって事?」
「違うよ。私は自分で選んでサナちゃんと一緒にいるんだよ」
「でもさっきの話を聞く限りじゃ、そのサナって子はの味方じゃないじゃない」
「そんな事ないもん。だってその子がいなかったら今頃私ここにいないわけだし……」
「えぇ……なんかちょっと怖いんだけど」
「大丈夫だよ! それにね、サナちゃんと一緒だと楽しいんだよ」
「例えば?」
「そうだねぇ、この間は一緒に買い物に行ったんだ〜」
「呪霊と!?︎」
「うん。それでね、帰り道に変なおじさんに声をかけられたの」
「……どんな?」
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