第9章 こんにちは赤ちゃん【暖和】
「今日は来てくれてありがとうございました」
「またいつでも来てくれ」
外まで3人を見送ろうとしたが丁重にお断りされてしまい、いよいよ今日のこの楽しい時間が終わりを迎える。
「こちらこそ、お二人の子どものお顔を見ることができ、とても心が洗われました」
「そうねぇ。また明日から仕事が頑張れそうだわ。また会えるのが楽しみ」
「次会うときにはきっと、さらに煉獄さんに似ているかもしれないわ!…なんだか私も、早く赤ちゃんが欲しくなっちゃったわ…」
そう言って蜜璃ちゃんは、優しく目尻を下げ、杏寿郎さんの腕に抱かれている奏寿郎をじっと見つめた。
「蜜璃ちゃんと伊黒様の赤ちゃん…きっとかわいいに違いないですね」
「そうだな。どちらに似ても、強く心優しい子に育つだろう」
「そうですね。あ!でも個人的には…蜜璃ちゃんのウェディングドレス姿を凄く見たいから是非その前に結婚式を挙げてもらえると嬉しいな」
蜜璃ちゃんはボッと頬を赤く染め
「いやだいやだっ!そんなこと言われたら私嬉しすぎてどうにかなっちゃいそう」
と、言葉の通りとても嬉しそうに言ったのだった。
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3人が帰ってしまうと、なんだか急に家の中が静かになったような気がした。
杏寿郎さんと私は部屋に戻り、杏寿郎さんは再びその腕に抱かれ、スヤスヤと眠ってしまった奏寿郎を布団へと降ろした。けれども杏寿郎さんはそのまま奏寿郎の布団の隣に胡座をかき、その可愛らしい寝顔を、眉を下げ微笑みながら見つめている。
ふと蘇ってきたのは、先程カナエさんが教えてくれた杏寿郎さんの
"寂しくもある"
という言葉。
私も同じだ。
奏寿郎が産まれてきてくれて、もちろん幸せだ。けれども、私はそれと同じくらい杏寿郎さんとこうして共に過ごせる時間が幸せである。
杏寿郎さんに近づき、膝立ちになり、その逞しい首にギュッと抱きついた。
「どうした?」
振り向きそう言った杏寿郎さんの声が酷く優しくて、私の心は杏寿郎さんへの"好き"で溢れ返る。
「…なんでもありません。ただ、こうしてくっつきたくなっただけです」
「そうか」
杏寿郎さんは、優しく私の手を解くとクルリと向きを変え、私と向き合う形になった。