第9章 こんにちは赤ちゃん【暖和】
「ふふふっ。学校で煉獄先生がね…」
"奏寿郎はそれこそ目に入れても痛くないほど可愛い!だがすずねを取られてしまったようで少し寂しくもある"
「って言ってたのよ。ね、似たもの夫婦でしょう」
そう言ってカナエさんはニッコリと微笑んだ。一方私と言えば、嬉しいやら恥ずかしいやらで赤面していた。
するとその時、
ふぇーん!
目が覚めたのか、奏寿郎の大きな泣き声が部屋に響いた。
「はいはい。今行きますよ」
慌てて立ち上がり、奏寿郎の寝るお布団へと近づき、その身体を抱き上げた。そのまま先程まで座ってきた場所に戻り
「奏寿郎。ほら。きれいなお姉さん達でしょう?」
と、杏寿郎さんとそっくりな目をぱっちりと開けた奏寿郎の顔を3人へと向けた。
「やだやだ!起きてるとさらに煉獄さんにそっくり!」
「本当に。誰がどう見ても煉獄家の血筋だってことがわかりますね」
「生まれて1ヶ月ちょっとでしょう…もしかして少し大きめ?抱っこさせてもらっても良いかしら?」
そう言ってカナエさんは私に向け両腕を広げ伸ばした。
「もちろんです!是非とも抱いてやって下さい!」
慎重にカナエさんの腕に奏寿郎を託すと、カナエさんはまるで菩薩のように優しく尚且つ美しい笑みを浮かべ奏寿郎を抱いてくれた。
「…やっぱり少し重めかしら?」
「実はそうなんです…」
思わず苦笑いが溢れる私の顔を、3人が不思議そうに見ている。
「奏寿郎、食欲?と言ったらいいんでしょうか…授乳しても授乳しても欲しがるんです。足りない分はミルクもあげてるんですけど。だから私自身食べても食べても体重は減っていくし、なんだか母乳と一緒に色々なものを吸い取られている気がして…」
そうげんなりと話す私を
「流石、煉獄さんの子どもね!」
「想像通りです」
「きっと逞しく育つわねぇ」
と微笑ましげに3人は見ていた。
その後しのぶさん、蜜璃ちゃんにも抱っこしてもらい、まだまだ表情が乏しい奏寿郎だが、心なしか嬉しそうに見えたのは私の気のせいかもしれないし、そうではないかもしれない。
真実はまだまだ力強さはないが、杏寿郎さん譲り…いや、煉獄家男児特有の猛禽類のような瞳を持つ奏寿郎のみぞ知る。