第9章 こんにちは赤ちゃん【暖和】
「とても…恵まれた環境だと思います」
「憧れるわ!素敵だわ!」
そんな風に話をしている間に、サッと襖が開かれ
「待たせてすまない」
そう言ってお盆にカップを4つ乗せた杏寿郎さんが部屋に戻ってきた。てっきり緑茶を持ってくると思っていたが、お盆に乗っていたのがティーカップで、そこからはダージリンの良い香りが香って来る。
「煉獄さんが紅茶のカップを運んでくるなんて、なんだか新鮮な光景ですね」
「む?そうだろうか」
4つ持ってきたカップのうち、1つはいつも私が使っているもので
「すずねのはカフェインレスだ!安心して飲むといい」
「ありがとうございます」
そんな細やかな気遣いがとても嬉しかった。立ち上がり、紅茶を配るのを手伝いながら
「カナエさんとしのぶさんからもお祝いをもらったんです!杏寿郎さんにも一緒に見てもらいたくて待っていたんですよ」
私がそう言うと
「そうか!お気遣いいただきありがたい!早速見させてもらおう」
杏寿郎さんも嬉しそうにニコニコと微笑んでいた。
「それじゃあ先に、蜜璃ちゃんから頂いた方をあけさせてもらおうかな」
「いいわよぉ!開けてちょうだい」
奏寿郎のところに置いてあった、紙袋をいそいそと持ってきて、蜜璃ちゃんからもらった紙袋から丁寧に包装された箱を取り出した。包装紙を慎重に剥がし中から出てきたのは、手触りのとても良さそうなベージュのブランケットと、焦げ茶色で、くまさんの耳がついたポンチョだった。
「わぁ!」
「可愛らしいな」
そのお店の商品は、自分のために買うのには少し値段も張り、けれども女性であれば一度は手にしたいと思うものだ。
「伊黒さんが、ブランケットなら奏寿郎くんとすずねちゃん2人とも使えるから良いんじゃないかって選んでくれたのよ!私は個人的にこのくまちゃんを奏寿郎くんに着てほしくて」
そう言ってほんの少しモジモジしている蜜璃ちゃんはかわいい。極めてかわいい。
「伊黒も共に選んでくれたのか!明日お礼を言わなくてはな!」
「ありがとう蜜璃ちゃん!早くこのくまさんを奏寿郎に着せてみたいな」
袋から取り出し、奏寿郎のそばに置き、私はそれを着る奏寿郎の姿を思い浮かべた。