第9章 こんにちは赤ちゃん【暖和】
「…うむ!そうだな」
杏寿郎さんはそう言うと、名残惜し気に奏寿郎をお布団にゆっくり寝かせ、
「では俺は茶を持ってこよう!」
そう言って部屋を出て行った。襖が閉じられ、杏寿郎さんの足音が遠のいていくと、
「ふふっ。煉獄先生ったら、息子さんが可愛くってしょうがないのね」
そう言って微笑みながら、そして奏寿郎の様子を楽しそうに伺いながらカナエさんとしのぶさんも私と蜜璃ちゃんがいる方まで来てくれる。
「私と姉さんからです。ご出産、おめでとうございます」
しのぶさんは先程の蜜璃ちゃんと同じように、持っていた紙袋をスッと私の方へと差し出した。
「お二人ともありがとうございます」
丁寧に両手で受け取り、嬉しさのあまり私は受け取った紙袋をぎゅっと抱きしめる。そして、早く中を見たくて、心の中で"杏寿郎さん早く戻ってきて"と思いながらうずうずしていた。蜜璃ちゃん、カナエさんしのぶさんからもらったお祝いを奏寿郎が寝ているお布団のところまで持って行き、
「ほら。お姉さん達からお祝いもらったのよ。嬉しいねぇ」
そう言いながら奏寿郎の側に置かせてもらった。奏寿郎はぐっすりと眠っているようで、私の言葉に全く反応することはなかったが、お祝いを頂けて嬉しくてたまらない私にはそんな事は気にならなかった。
「お茶はまだですけどお茶菓子はたくさんあるので、よかったら食べてください」
予め部屋の中央に準備しておいたテーブルに、瑠火さんから受け取ったカゴを置くと、
「わぁ!食べてもいいの!?私の大好きなデパ地下のクッキーもあるわ!嬉しい!」
蜜璃ちゃんは目をキラキラさせ喜んでいた。
「ふふっ。瑠火様チョイスなの。遠慮なく食べてね」
「それで、初めての育児はどんな感じかしら?」
「とっても楽しいです!不慣れなことばかりですが、困ったら瑠火さんが手助けをしてくれますし、平日はそうも行きませんが、土日は杏寿郎さんがすごく積極的に色々してくれているので、思っていた以上に気持ちに余裕を持つことが出来てます」
瑠火さんのサポートは本当に絶妙で、基本は見守り姿勢で、困っているときはすぐに察知し、手を差し伸べてくれる。杏寿郎さんも休み日は、オムツ替え、ミルク、沐浴と、授乳以外であればなんでも嬉しそうにやってくれた。