第9章 こんにちは赤ちゃん【暖和】
「「「おじゃまします」」」
それから程なく、大好きな3人が煉獄家へと来てくれた。
「いらっしゃい!…って言っても、正確には私の家ではないんだけど」
「ふふっ。これ、駅の近くにある和菓子屋さんのお団子なんだけど。後で煉獄家の皆さんで召し上がってね」
そう言ってカナエさんが渡してくれたのは、杏寿郎さんと千寿郎さん、そして私も好んでよく買う和菓子屋さんの餡子たっぷりのお団子だった。
「わぁ!このお団子!すごく食べたいと思ってたんです!ありがとうございます」
居間にいた瑠火さんと挨拶を交わし、私は3人を杏寿郎さん、私、そして奏寿郎の部屋へと案内した。
廊下をおしゃべりしながら歩いていると、部屋に向かってくる私たちの声に気づいたのか、杏寿郎さんが部屋からひょっこり顔を出し、
「よく来たな」
控えめな声でそう言った。おそらくその腕にはまだ奏寿郎を抱いているのだろう。
杏寿郎さん、よっぽど奏寿郎が可愛いんだろうな。
仕方のない人だなと思いながらも、そんな杏寿郎さんが私は心から愛おしい。
部屋に入り、3人は杏寿郎さんに抱かれている奏寿郎を見つけると、
「っかわいい!かわいいわ!小さな煉獄さんだわ!」
「こんなに小さいのに煉獄先生にそっくりね」
「ええ本当に。でも、目元がすずねさんにも似ています」
と、杏寿郎さんの腕に抱かれた奏寿郎を覗き込み、起こさないように気を遣ってくれたのか、声をひそめながらそう言った。
「私のお腹で育ったはずなのに、遺伝子の力って本当すごいですよね」
そんな5人を遠巻きに見ていると、この平和な世に産まれてくることができて幸せだと改めて思った。
蜜璃ちゃんは、一旦その輪から離れ、私の方に来ると
「あの、これ伊黒さんと一緒に選んだの!お祝いなんだけど…良かったら使ってね」
そう言って、手に持っていた紙袋を私に差し出した。
「わぁ!嬉しい!ありがとう!…開けてみても良いかな?」
「もちろんよ!」
「じゃあ…杏寿郎さん!蜜璃ちゃんからお祝いをもらったの!抱っこしていたい気持ちはわかるんですけど、奏寿郎をお布団に寝かせて一旦こっちに来てくれますか?お茶も取りに行かないといけませんし」