第46章 このまま猫になりたい✳︎不死川さん※裏表現有
けれども私に向け投げかけられたのは、地獄の打ち込み稽古を始める時に師範が必ず口にする、"さっさとかかってこいやァ!"といういつもの決まり文句ではなく
「尻、こっちに向けろォ」
そんな言葉だった。
私は、気持ち程度しか膨らみのない胸を両腕で隠し(もうがっつり見られてしまったからあんまり関係ないけど)、私のダイジナトコロが見えないよう、内腿をギュッとくっつけながら私を見下ろしている師範を仰ぎ見た。
「…え…お尻…ですか…?」
「あァ」
「…にゃんの…ために…?」
「身体に叩き込んでやるっつっただろォが」
「…っ…そ…それは…どのように?」
「いいからさっさとしろォ」
「……はい…」
きっとあの大きな手のひらで、私の小さな…いや小さくないか…とにかくお尻を叩くつもりなんだ…
"どうか跡になりませんように"…と、心の中で願いながら、私はいそいそと180度回転し、師範に背中を向けた。
「それじゃァ尻が見えねェだろォ。しっかりこっちに向けろォ」
一矢纏わぬ姿で師範に尻を差し出す…いくら継子とは言え、果たしてこんなことまでしなければならないのだろうか。いや、そんな必要は絶対にない。
普通に考えればそうなのだが、残念ながら今の私は普通の状況とは程遠い位置におり、この体験したことのない状況下では、まともに物を考えることも出来なくなっていた。
……もうやだ!恥ずかしすぎ!
胸を隠していた両手を解き、膝よりも10センチほど前に着く。すると自然と尻が浮き上がり、気持ち程度だが師範に尻を向けた形になった。
「これでどうかご勘弁を…!」
「いいぜェ…覚悟はいいなァ?」
「…よくにゃいけど……っいいです!」
「相変わらず、返事だけはいい奴だァ」
楽しげな声色で師範がそう言い終えた直後、痺れるような尻の痛み…ではなく
「…っにゃあぁん!」
痺れるような快感が、師範が触れた尻尾の付け根からブワリと広がるように全身に駆け巡った。
「…にゃあっ…っ…これ…だめぇ…!」
快感から逃れようと、前に進もうとしたが
「逃げんなァ…身体に叩き込んでやるっつっただろォ」
師範が、尻尾の付け根に触れていない左手で私の左足を掴みそれを阻んだ。