第46章 このまま猫になりたい✳︎不死川さん※裏表現有
……拳骨がくる…!
数秒後に訪れる衝撃に備えるように首をすぼめた私だったが、訪れたのは痛みではなく
「んにゃあっ!」
背筋をビリリと走る快感だった。
今まで過ごしてきた人生において、自分の頭からこんな風に快感を得ることは一度たりともない。
「…っん…にゃ…しは…にゃに…お…?」
快感でジワリと溢れて来る涙を堪えてながらすぐ目の前にある師範の顔をじっと見つめると
「ちゃんと神経通ってんだなァ」
師範はチラリと私の顔を見た後
「…っ…ん…神経…?」
再び私の頭頂部へと視線を戻した。それから私の右手首をガシッと掴み、相変わらず視線を寄越している頭頂部へと持って行くと
フワッ
「……んにゃ?」
私の指先に、なにやら柔らかくて温かいものが触れた。そしてその"触れた"という感覚は、指先だけでなく
……私の頭に…何か…ある…?
それ以外の不思議な感覚を覚えた。
師範は、意味がわからないと首を傾げている私の頭頂部に再び手を伸ばし
「…にゃ…っ…それ…だめです…!」
私に謎の快感を与えると
「……耳と…尻尾…あとその変な喋り方、そこはまだ猫のままなんだァ」
感心したような口調でそう言った。
……耳と…尻尾?
私が改めて自分の手で頭頂部の柔らかいものの感触を確かめてみると
「……猫の耳…?」
血鬼術の名残なのか、確かに私の頭頂部にはフワフワの猫の耳が存在していた。そしてチラリと自らの背後へと視線をやると
「……尻尾…」
焦茶色の細長い尻尾が私の尾骶骨辺りから生えていた。
なんとなく尾骶骨辺りに力をこめてみると
パタッ…パタッ
焦茶色の尻尾が上下に動いた。
「……すご…」
思わず呟いてしまった私だが
「すご…じゃねェよこのアホんだらァ。こんな馬鹿げた血鬼術に2度もかかる奴がいるかァ」
「…っ…返す言葉もありません」
師範の言葉に、シュンと肩を落としてしまった。
そして
「2度とこんなことにならねェように、俺がその身体に叩き込んでやらァ」
投げかけられたその言葉に
「……はい」
私は大嫌いな地獄の無限打ち込み稽古をするべく腹を括った。