第46章 このまま猫になりたい✳︎不死川さん※裏表現有
……ん……背中…すごく……きもちいい…
指先で優しく揉み解すように触れてくるその感覚を味わいたくて、どうしてそんな音が出てくるのか仕組みはいまいちわからないのだが、私はゴロゴロと喉を鳴らし、背中を持ち上げ離れていく指を追いかけるように動かした。
……そこ…もっと撫でで欲しい……そう…そこ
欲求が満たされた私は”これこれ”と思いながら軽く身じろぎをした。けれどもその直後
…………あ
自らが再び犯した過ちにようやく気づき
…………終わった
一瞬で幸せから地獄へと突き落とされた気分に陥る。
そして
「お前、この辺じゃァ見慣れねェが…新入りかァ?」
顔をそちらに向けずとも、その特徴的な喋り方が私の背中に触れている人物が絶対にこの姿を見られるわけにはいかないと思っていた人物であることをありありと示していた。
”もしかして万が一”を願い振り返ってみるも、やはりそこにいるのは
「人懐っこくってかわいいやつだなァ」
左ひじをついた状態で縁側にゴロンと寝そべり、空いた右手で私の背中を優しく撫で続けてくれている師範の姿。
いつの間に、そして何故戻ってきたのかは全くわからないが、私の身体は、温かさを求め自らそうしたのか、師範の露わになっている胸板にピットリと身を寄せるようにくっついている状態だった。
……知らない猫が縁側で寝てたら追っ払っえばいいのに…この動物好きのギャップ柱め…!!!
私は、人間の私が口に出したら即ぶっ飛ばされそうな文句の言葉を心の中で述べ、ゆっくりと立ち上がった。それから何事もなかったようにシレっとこの場を去ろうとしたのだが
「…なんだァ?もう行っちまうのかァ?」
そんな言葉と共に、尻尾の付け根あたりを絶妙な手つきで撫でられてしまい
……っ…なにこれ…すごい気持ちいい…
私は、あまりの気持ちよさに動けなくなってしまった。しかも動けなくなっただけでなく
「…ほォ…お前ェは、ここ撫でられるの好きなタイプのようだなァ」
「にゃお~ん」
もっともっとと自分でも驚いてしまうような欲求が胸の奥からこみ上げ、師範の手にお尻を擦り付けていた。