第46章 このまま猫になりたい✳︎不死川さん※裏表現有
「あらあら。随分と必死なご様子で。でしたら私から余計なことを言うのは控えておきます」
私は、首をかしげながらクスクスと笑うしのぶさんに向け頭を深く下げた後、ピョンと椅子から飛び降り、真上を向かないと見えないほど上にあるしのぶさんの顔を再び見上げ
「にゃぁにゃにゃぁー」
”ありがとうございました”
の気持ちを込め鳴いた後、診察室の扉へ向かうべくテトテトと四肢を動かした。
しのぶさんは扉を開けることが出来ない私のために、さっとそれを開いてくれると
「隠の方が来るまで玄関で待っていてください。お大事に」
最後にそう言い、診察室の扉を閉めた。
隠の方に風柱邸まで連れ帰ってもらった私は、しのぶさんの言いつけを守るべく、風柱邸で最も日当たりのいい縁側に座り込んだ。
……今日この時間帯に師範が戻ってくることはないだろうし…自分の部屋よりも、ここの方がずっと日当たりがいいもん…陽が落ちるまでここにいよう
そんなことを考えながらお行儀よく座っていたが、心は柏木すずねをしっかりと保っているが、身体はまごうことなきにゃんこのそれなわけで
………やば……眠い…
私は、ものすごい睡魔に襲われていた。
日光浴をできなくなってしまうのは残念だが、万が一を想定し眠りこけてしまう前に自室に隠れなければならない。
そう思いはしたものの、お行儀よく座っていたはずなのに、いつの間にか胴体の下に隠すようにしまい込まれていた四肢は、私の意志に反するように重く感じ、ここから動きたくないと訴えかけてくる。
……いや……でもついこの間…同じように眠気に負けて大失態を犯したんだから……同じ轍を踏むような馬鹿なことは……する…もんですか…!
自身を奮い立たせるようにカッと目を見開いてみた私だが
……やっぱ無理…
食べることよりもはるかに眠ることが大好きな私という人間が(今は猫だが)、眠気という敵に打ち勝つことなど出来るはずもなく
……10分……いや……5分だけ………
眠りの世界へ身をゆだねてしまったのだった。