第45章 このまま犬になりたい✳︎不死川さん
けれども
……破門なんて…嫌!私、まだまだ師範に教えて欲しいことたくさんある…やっと師範の稽古についていけるようになったのに…こんなことで無駄にしたくない…!
”辞めたくない”
心の底からそう思ってしまった私は
「…っ師範!」
バッと立ち上がり、依然として固まっている師範の目の前まで移動し
「私…師範の継子を辞めたくありません!もう二度とこんなミスはしないと約束します!だから破門にしないで!もっともっと稽古をつけて下さい!」
胡坐をかき、視線を床の方へと向けている師範の顔を見上げる様な姿勢になりながら訴えかけた。
そうなればもちろん
「…馬鹿お前見え…っその姿勢やめろォ!」
上着の役割しか果たさない羽織では色々な部分が見えてしまうわけで、師範は耳の縁を真っ赤に染めながら私を怒鳴りつけてきた。
「やめません!師範が破門にしないと約束してくれるまで…私は絶対に引き下がりません!」
「ば…っ…離れろォ!」
「離れません!!!」
意外や意外…押せばなんとかなってしまいそうなこの雰囲気に、私は追い打ちをかけるように師範に身体をグッと寄せた。
「…っ…わかった!今回のことは不問にしてやる!だからさっさとテメェの部屋に帰りやがれこのクソがァ!!!」
突き飛ばしたり投げ飛ばしたり…私を避ける方法などたくさんあるはずなのに、師範は私の素肌に触れることを気にしているのか(稽古中はあんなにも容赦ないくせに)、両手を後ろに着き、天井の方へと顔を向けながらそう言った。
……そんなに一生懸命顔を反らさなくっても、減るもんでもなければ大した身体でもないのになぁ
内心そんなことを考えながら
「ありがとうございます!羽織は洗って返します!お目汚し、本当にすみませんでした!それでは失礼します!」
師範の心が変わってはいけないと、急いで頭を下げ、バタバタと逃げるように部屋を出た。