第45章 このまま犬になりたい✳︎不死川さん
そんな私をギンッと射殺すような視線で睨んでいた師範だが
「…っ……犬っころ…!?」
大事に腕に抱いて寝たはずの存在がなくなっていることに気が付いたようで、布団に横たえていた身体をバッと起こした。
その際、私の身体に掛かっていた掛布団がパッと剥がれ、外気に晒された身体に僅かな肌寒さを感じた。
なぜ肌寒かったのか。それはもちろん
「……テメ…っ…何で服着てねェんだ!?!?」
「…っ…あ…そ…こ…これは…」
私が一糸まとわぬ姿…つまりは裸だったからだ。
…っ…どうしよう…これじゃあ私…裸で師範の布団にもぐりこんだ変態だと思われちゃう…でも…あの犬の正体が私だって知られたら…それもまた地獄のような展開になりかねない…!
とりあえずこのまま転がっている訳にはいかないと身体を起こしたのだが
「…っ馬鹿お前ェ少しは前隠せェ!!!」
師範になんと答えるべきかで頭がいっぱいだった私は、露わになっている自身の身体を隠すことをすっかりと忘れてしまっていた。
「…っお見苦しいものをお見せしてすみません!」
「んな格好で頭下げんなァ!いいから隠せェ!」
「だってだってぇ!」
「だってじゃねェ!!!兎に角さっさとこれ着て説明しろォ!!!」
怒号と共に私の元へと飛んできたのは、師範が邸にいる際たまに羽織っている羽織で、私は申し訳ないと思いながらも素直に袖を通させてもらった。
「……つぅとなんだァ…昨日のあの犬っころはお前ェだったっと……そういうわけかァ?」
「…っ…はい…そういうことでございます…」
何故私が師範の布団で裸で寝ていたのか…包み隠さず説明しないと破門にすると宣言されてしまった私は、昨日師範が連れ帰ったあの犬が血鬼術で犬にされた私であり、犬の姿であった故に衣服を着用することが出来ず、その結果として最終的には裸で師範の布団で寝ていたという今に至ったことを話した。
きちんと説明すれば破門にされることはないと思っていた私だが、私の話を聞き、額に太い青筋を立てたまま固まってしまった師範の様子に
……だめだぁ…どちらにせよ師範の継子としては失格……破門だ…!
そんな未来が頭を過った。