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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第45章 このまま犬になりたい✳︎不死川さん


……なんとか…ここから抜け出さないと…


そう思い四肢をモソモソと動かしてみた…のだが


「………どうしたァ…?」


初めて目にする、師範の気を許したようなゆったりとした様に、傍を離れるのが惜しいと感じてしまい、自然とその動きが止まってしまう。

師範は大人しくなった私の顔の側面に、指先で優しくくすぐるように触れると


「……いい子だァ…」


呟くような静かな声でそう言い、その瞳をゆっくりと閉じ

スゥ…スゥ…

と、眠りの世界へと落ちていった。

こうして眠っている師範の姿を目にするのも初めてのことで、私は


……噓……師範の寝顔……凄くかわいい


そのあどけない表情に衝撃を受けた。そしてその表情をもっともっと見ていたくなってしまい、”ここから抜け出さなければ”という考えは、はるか彼方に吹っ飛んで行った。

そうしてしばらくの間師範の寝顔をじっと見つめていた私だが

柔らかい布団
暖かい身体
穏やかな寝息

その3つが揃ってしまえば、自然と眠くなってしまうという訳で


……少しだけ…少しだけ寝たら自分の…部屋に…行くから


私は心の中でそんなことを呟きながら、襲い来る眠気に身を委ね、重くて重くて仕方ない瞼をフッとおろしてしまったのだった。


























……ん…なに……?


身体が軋むような感覚に襲われた私は、だんだんと気持ちいい眠りの世界から現実の世界へと引き戻されて行く。


……なんだろう…腕と脚が急に伸びたような…そんな感が………………ってそうだ!!!


自分が今、何処で、何をしているのか…意識の覚醒と共に思い出した私は、瞑っていた目をパッと開いた。

すると


「…あ」
「…あァん?」


私とほぼ同時に目が覚めたと思われる師範と、バッチリ目が合ってしまった。


「…………」
「…………」


互いに見つめ合ったまま10秒ほど沈黙が続いたが


「…柏木テメェ…ここで一体何してやがんだァ…?」


地を這うような低い声と共に、師範のこめかみにギュンと青筋が浮き上がってきた。

そんな師範の様子に


「…っ…え…あ…いや…そのぉ…」


私は何と答えれば最も師範の怒りをかわずに済むか…懸命に思考を巡らせた。


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