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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第45章 このまま犬になりたい✳︎不死川さん


起こし上げていた身体を再び丸め、”…はてこれからどうしたものか”と思案を巡らせていると

サッ

と襖の開く音が聞こえ、普段のそれよりもかなり聞こえのいい左耳がピクリと反応してしまった。


「起きたかァ?」


師範は犬の私に視線を合わせるように低い姿勢になり


「小汚ねェ犬だなァ…だが、愛嬌のある顔だ。俺はいつ死ぬかわからねェ身だし、うるせえのが1匹もうこの邸にはいるからなァ…隠に頼んでお前ェの家探してやるよ」


そんなことを言ったかと思うと、雨の中私を抱き上げてくれた際と同じように優しい手つきで私を抱き上げた。

それから


……あ…それすごく心地いい…


私の毛まみれの(犬だから当たり前だけど)眉間のあたりを優しく撫でつけた。

目を瞑り、その心地よさを堪能していたのだが、スッとその手が離れて行ってしまい


クゥーン


と強請るような声が出てしまう。


「…っクク…お前ェ可愛い奴だなァ」


そう言って笑う師範の顔は、やはり今まで一度も見たことのないそれで


……師範のその顔のほうが可愛いんですけどぉぉお!


私の脳内は大パニック状態だった。

師範はパタパタと揺れ動く私の尻尾に更にその笑みを深め


「取り合えず、その薄汚れた身体をきれいにしてやるからなァ」


言葉の通り汚い私に頬ずりしながら居間を出ると


……え…綺麗にするってまさか……


嫌な予感が頭を過ぎる私を抱いたまま、ゆっくりと歩き始めた。





















たどり着いたのは予想通り湯殿で


「…きもちいいかァ?」


師範は、私の抵抗を物ともせず、私の身体をワシャワシャとその手で洗い始めた。

犬の身体とはいえ、師範に身体のあちらこちらを触られ洗われるという行為はとんでもなく恥ずかしく


……も…やだぁ…恥ずかしい


ちらりと視界に入った自身の尻尾は、悲しげにだらりと垂れ下がっていた。それは耳も同じだったようで


「…っクク…嫌なのかァ?我慢してえらいじゃねェか。ほら、もうすぐ終わるから、そんな風に耳垂れ下げてんじゃねェよ」


師範は私の両耳を指先で優しく洗ってくれた。

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