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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第45章 このまま犬になりたい✳︎不死川さん


恐怖で真下に向けていた視線を声のした方…師範の顔の方へと向けると


……っ…なになに何なのその優しい顔ぉぉぉお!!!


一度たりとも見せてもらったことのない、穏やかで優しい笑みを浮かべた師範の顔が視界に映り込んだ。

師範が犬や猫を好いていることはなんとなく気が付いていた。けれどもまさか、こんな表情を向けるとは夢にも思っておらず


……意外過ぎるんですけどぉぉぉお!!!


私は、パチクリと何度も瞬きを繰り返し驚くことしか出来なかった。

師範は、雨粒で泥はねし薄汚れてしまった私の身体のことなど全く気にする様子もなくその腕にサッと抱き上げると


「ほらみろォ…冷えちまってるじゃねぇかァ」


と言いながら、私の身体をいつも着ている羽織で包み込んでくれると


……なにこれ誰これ???


自身を濡らし続ける雨など全く気にしないまま、それでも犬の私を大事に大事にその腕に抱き込み、ゆっくりと歩き始めた。

羽織にくるまれ、師範の温かな胸に抱かれていると


……やば…この温もりといい…この揺れといい…心地が良すぎて眠くなってきちゃう……


夜通しの任務で疲れた私が眠気に抗えないのは当然のことだし、尚且つ


「なんだァ?お前ェ眠てェのかァ?」


師範の手が私の頭を優しく撫でてくれるものだから


……こんなの……寝るなって言うほうが……無理でしょ…


私はこんな状況下にも関わらず、ストンと眠りの世界へと落ちてしまったのだった。





























……ん…?…っ…まずい!すっかり眠りこけちゃった…!


慌てて起きた私の視界に映り込んで来たのは、慣れ親しんだ風柱邸の居間で、あの場所からここまで、師範の手によって連れて帰ってこられたことを理解した。

犬の姿の私の身体の下には師範の羽織が敷かれており


……起こさないように気を遣ってくれたんだろうな……野良犬にこんなに優しくしてくれるのなら、その優しさの欠片でも弟子の私にくれたっていいのに…


鍛錬の度失神寸前まで追い込まれる(3回に1回は実際失神してるけど)継子の私に対する対応とのその差に、なんだか恨めしさにもにた感情が胸に湧き上がってきた。


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