第44章 雨上がり種植えつけられる✳︎煉獄さん※裏表現有
「存外でなく、杏寿郎さんはとっても嫉妬深いお方だと思いますよ?この間も、届け物に来てくれた隠の男性から私の身を隠そうとしたり、呉服屋さんの若旦那を牽制したり、まさかこんなかわいい蜜璃ちゃんにまで嫉妬なさるなんて、杏寿郎さんは本当に私の事がお好きですね」
たまには杏寿郎さんを揶揄ってやろうとそんなことを口走ってみると、杏寿郎さんの手が私の顎をサッと捉え、真上を向かされてしまう。
そのまま鼻先が触れ合ってしまいそうな程の至近距離でじっと見つめられ
「あぁ好きだ。何か問題あるだろうか?」
そう尋ねられてしまう。
そんな杏寿郎さんの行動に、杏寿郎さんを揶揄う余裕は一瞬で何処かへと消えて行ってしまい
「…っ…ありま…せん」
蚊の鳴くような声でそう答えることしか出来ない。
「それはよかった。で、君はどうなんだ?」
「…っ…どうって…」
「俺の事が好きか?」
燃えるような熱い瞳でじっと見つめられ、そんなことを聞かれてしまえば
「……好き…です」
私の口は勝手に杏寿郎さんへの気持ちを吐露し始め
「好きだけか?」
「…大…好き…です」
「まだいけるだろう?」
「……愛…してます…」
「ん。俺も、すずねを心から愛している」
あっという間に心を丸裸にされてしまった。
そして
ちぅ
杏寿郎さんの唇が押し当てられ
……どうしよう…とっても幸せ…
私の心は、杏寿郎さんへの愛、それから杏寿郎さんからの愛で満たされていった。
目を瞑り、その唇の感触を堪能していると
ちゅるっ
杏寿郎さんの熱い舌が、私の口内に侵入して来た。私はとっさに顔を背け
「…っそれは駄目です!」
濃厚な口づけへと移行していくのを強制終了した。
顔をそらしたまま視線だけを杏寿郎さんの方へと戻すと、それはもう不満げな表情で私の事をじっと見ていた。
「…っ…蜜璃ちゃんがここにいるんですよ?軽く口づけるだけならまだしも…そこまでは…いけません」
「すっかり寝入っているではないか」
「寝入っていても駄目なものは駄目です」
「むぅ…」
杏寿郎さんは、不満気な表情を貼り付けたまま私から離れていき、元居た場所に戻っていく。その背中は心なしか普段よりも丸まっているように見え、なんだかものすごくかわいそうに見えてきた。