第43章 水着と下着、その差はいかなるものか✳︎【暖和】※微裏有
「では今後、俺以外の前でその水着を着ないと約束できるな?」
「…っ…はい……約束…します」
「そうか!ではこの話はもう終いだ!」
杏寿郎さんはガラリとその雰囲気を変え
「実に素晴らしい景色だ!今度父上と母上にも勧めてみよう!」
私の腹に腕を回しながらそう言った。
……瑠火様と…槇寿郎様が…ここに…?
2人がここにいる姿を想像してみると、私の胸にくすぶっていた妙な気持ちがシュンッと一瞬でなくなっていく。
「…ふふ…槇寿郎様…きっと瑠火様が心配で心配で、湯を楽しむどころではなくなってしまうと思いますよ?お勧めするのであれば、やっぱり秘湯とかの方がいいと思います」
「わはは!確かにそうだな!」
「もうすぐお二人の結婚記念日ですよね?折角ですから、1泊2日の温泉旅行でもプレゼントしてあげましょう」
「それは名案だ!」
そんな風に楽しく会話を交わしながら、杏寿郎さんとの天空露天風呂を今度こそ楽しもうとしていた私だが
「ではそろそろ出るとしよう」
腹部に回っていたはずの杏寿郎さんの手が私の両脇に差し込まれ、スッと立ち上がらされてしまう。
「え?もうですか?」
そう言いながらちらりと時計を見てみると、杏寿郎さんと無事合流してから10分ちょっとしか経過していない。
「うむ!人が増えてきたからな!先ほど言った通り、俺はこんな君の姿を他の男に5秒…いや!1秒たりとも見せたくはない!」
「……わかりました。それじゃあ、行きましょう」
「うむ!」
しつこいようだが、杏寿郎さんを愛してやまない私という人間としては、いくら天空露天風呂をもっと楽しみたいという気持ちがあろうとて、杏寿郎さんの気持ちを優先しないという選択肢は存在しない。