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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第43章 水着と下着、その差はいかなるものか✳︎【暖和】※微裏有


先ほどは杏寿郎さんに引っ張られているときは気が付かなかったが、同性同士(特に女の子同士)で盛り上がっているグループも多くあるが、どちらかといえばイチャついているカップルの方が多い。


……家族連れもほとんどいないし…やっぱりこんなロマンチックな場所にいると…自然とお互いの距離が近くなっちゃうものなのかな…?


そうは思ったものの、例え周りがそうしていようと、杏寿郎さんがここまで外であからさまにベタベタしてくるのは珍しい。そもそも、先ほどのように、理由も言わず不機嫌になること自体が非常に珍しい。


周りへと向けていた視線を正面に戻したその時、背後にある杏寿郎さんの頭が、左に動いた気がした。私は、その動きに合わせるように杏寿郎さんの顔がある方へ、自身のそれをずらすと


「……っ…見すぎ…です…!」


杏寿郎さんの鋭い視線が、まっすぐ私の胸の谷間へと、一切の遠慮もなく注がれていることに気がついた。

あまりの熱い視線に、両手の平でそこを隠そうとするも


「こら。今は俺しか見ていないのだから隠すんじゃない」


ごく当たり前のようにそう言われてしまった。


……そうだ…そもそも私…杏寿郎さんを驚かせたくってこの水着を選んだんだもん…しっかりと見てもらわないと


本来の目的を思い出した私は、僅かに顔を出している羞恥心を心の端っこに追いやり


「…この水着…どうですか…?」


杏寿郎さんの表情を伺いながらそう尋ねた。すると


……あ…また…さっきの顔になっちゃった…


杏寿郎さんは、口を真一文字に閉じ、先ほど取り戻したはずの普段の表情から、不機嫌そうなそれに戻ってしまった。

そんな反応をされてしまえば、私がたどり着く答えはひとつ。


「…っ…杏寿郎さんに…そんな顔をさせてしまう程…この水着……似合ってませんか…?」


たいしてスタイルもよくない、20代半ばの私には、この水着はふさわしくない。もしかしたら杏寿郎さんに、一緒に居るのが恥ずかしい…と思わせてしまっているのかもしれない。

先ほど”隠すなと言われ、素直にその言葉に従った私だが、半ば無理矢理寄せてあげて作った谷間を見られているのが恥ずかしくなり、今度こそ自身の手でそこを隠した。

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