第8章 炎の音に包まれて【音好きシリーズ】※裏表現有
「むぅ。俺には君の言う、相応しいだとか相応しくないだとかがよくわからない!俺は君を好いている。君も俺を好いている。それではダメなのか?」
「…っよく考えてください!炎柱様は鬼狩りの名家、"煉獄家"の御長男なんです!それ相応の家柄の女性と、結婚しなくてはならない身です!私のような身寄りのない、鬼殺の道に身を置く、天邪鬼なんかと…お付き合いなんてするべきではありませんっ!」
捲し立てるようにそう言った私の言葉に、
「……」
炎柱様は何も答えない。
どうしたのかと指の隙間から盗み見た炎柱様は、じーっと私を見ていた。
しばらく私を見つめた後
「俺がその理由で納得すると思っているのか?」
顔をしかめそう言った。
ガッと手を掴まれ、
「…ひっ!」
顔を覆っていた手を剥がされてしまい、目の前に現れたのは、炎柱様の燃える様な熱い瞳。
「確かに俺の生家は所謂名家と言うものに当たる。だが俺は別に父上から家柄の良い家の娘を娶れとも、鬼殺隊の隊士と恋仲になるなとも言われていない。例え言われたとしても、前も君に言った通り、俺は自分の伴侶は自分で決める!それが君だ。天邪鬼で素直じゃない君を…すずねのことを心より好いている。それで十分ではないか?」
その声色に、瞳に、少しの嘘も感じなかった。
もう…無理だ。
「…っ…後悔…しませんか…?」
「うむ」
「…私…実は…すごく甘えたがりですよ?」
「それは楽しみだ!」
「…本当に…私で良いの…?」
「君以外考えられない」
男なんて信用ならない。
欲望まみれで、
大きな声で自分よりも弱いものを威圧し、
時には手をあげる。
そんな人ばかりだと思っていた。
けれども炎柱様は、冷たく凍りついた心を、その熱い炎で溶かしてくれた。
これから生きて行くなら…この人の隣が良い。
私は炎柱様の首に腕を回し、少しの隙間も出来ないように身体を密着させた。
「…っ好き…大好きです…!…私を…炎柱様の…恋人にして下さい…!」
炎柱様もその言葉に応えてくれるかのように、私の身体に腕を回し
「…ようやく捕まえた」
私を強く抱きしめてくれたのだった。