第43章 水着と下着、その差はいかなるものか✳︎【暖和】※微裏有
「これも、これも、これも、これも!露出が少なすぎるのよ!」
「…へ?」
「柏木さんまだ20台半ばでしょ?そんなに隠してたら、イケメン夫の視線を他の女に奪われちゃうよ!?」
先輩は自らのスマートフォンの画面を私の顔の前に持ってくると
「これ!私は絶対に、柏木さんにはこれが似合うと思うの!」
若干興奮気味な様子で言った。”早く見て”と言わんばかりにズイッと差し出された画面に目を向けると、私が候補に挙げた水着とは違ったテイストのそれが視界に映り込んでくる。
「…っえぇ!?これですか!?」
驚き目を白黒させ驚いている私の一方で
「そうよこれよ!可愛くて露出が多い!それになにより盛れる!!!」
先輩は極めて楽しそうである。
「…別に私は…盛りたいと思ってないし…何よりやっぱりこの露出の多さが気になって…杏寿郎さんも…きっと驚くし…」
先輩が見せてきた水着の画像は、私が選んできたそれらと比べると、肌を覆い隠す部分が随分と少ないように見える。自分では絶対に選ばないタイプだ。
もごもごとそんなことを言っていると、先輩がスマートフォンの画面を私の顔に更に近づけて来た。
「だから!イケメン夫を驚かせてやるの!想像してみて!」
「…何をです?」
「イケメン夫が、柏木さんの水着姿を見て、ほっぺを赤くしながら照れる姿!」
「…杏寿郎さんが……照れる姿…?」
画面へと向けていた視線を天井の方に向け、頬を赤く染めながら照れている杏寿郎さんの姿を想像してみる。
口元を手で覆い隠し、頬を赤らめ
”随分と肌色の部分が多い気もするが…よく似合っている”
私から視線をそらし、普段よりも声の小さな杏寿郎さん。
………いいかも
そんな私の思考が先輩には透けて見えていたようで
「ね?良いでしょ?若い子もいっぱい来るし、この水着以上に露出度が多い水着を着てくる人もいっぱいいるから!これにしなさい!」
先輩が畳みかけるようにそう言ってくる。
私は最後にもう一度、先輩のスマートフォンに表示されている水着をちらりと見た後、再び先輩の顔へと視線を向けた。私と目が合った先輩は無言で大きく頷き、私もそれに釣られるように頷いた。