第42章 推すのに忙しい私を押してこないで*煉獄さん
煉獄様は私とのやり取りがじれったくなったのか
「それも違う!”好き!大好き!一生ついていきます!”…だ!」
私の両肩に大きな手のひらを置き、身体をグイッと引き寄せながらそう言った。
……煉獄様…一体何がしたいの…?
そう思いながらも、蜜璃様のお師匠様に逆らう選択肢など私にあるはずもなく
「……好き。大好き。一生ついていきます…?」
とりあえず、言われた通りの言葉を口に出してみる。
「その言い方では駄目だ!もっと心を込めて!」
「…好き。大好き。一生ついていきます」
「駄目だ!」
「…好き!大好き!一生ついていきます!」
「まだだ!」
「…好き!大好き!蜜璃様に一生ついていきます!!!」
「違う!”蜜璃様に”ではない!”杏寿郎様に”だ!」
「好き!大好き!杏寿郎様に一生ついていきます!!!………ん?」
煉獄様に言われるがまま蜜璃様への愛を叫んでいたはずの私だが、気が付くと愛を叫ぶ対象が蜜璃様から煉獄様へと変わっていた。
…何これ…私は一体…何を言わされてるの…?
我に返った私は、意味のない瞬きを繰り返し、”やはりそうか”と言いながら斜め下辺りに視線を落としている煉獄様を見ていることしか出来ない。
煉獄様は私の肩においていた手を離し、くるりと身を翻し玄関の外に出た。それから再び私の方に振り返ると
「今まで何度となく愛の告白とやらを受けてきたことはあるが、あんなにも俺の心に強く響いて来たのは柏木のそれが初めてだ!」
いつも上がりがちな口角を更に上げ、目を爛々とさせながらそんなことを言って来た。
……待ってよ…私…煉獄様に愛の告白なんてしてないし……煉獄様…一体何が言いたいの…?
煉獄様の言わんとしていることが全く理解できず、私は思考の波におぼれてしまう寸前だ。その間にも何故か煉獄様の話は加速度を増していき
「君の一番に、俺はなりたい!」
最終的にたどり着いたのがそこらしい。