第42章 推すのに忙しい私を押してこないで*煉獄さん
「……き……だ…き………す」
「何だ?すまないがよく聞こえない。顔を上げてはもらえないだろうか?」
バッと勢いよく炎柱様の胸元から顔を上げると、私を心配げに見下ろす、猛禽類のような瞳と視線がかち合う。
「…っ好き!大好き!蜜璃様に一生ついていきます!」
胸に収まりきらない蜜璃様への愛を、目の前にいる煉獄様にぶつけたその時
「…っ!?!?」
ただでさえ大きく見開かれていた煉獄様の瞳が、更に大きく見開かれた気がした。けれども蜜璃様への気持ちで胸いっぱいの私には、そんな煉獄様の変化などどうでもよく
「やはり私には蜜璃様しかいません!おばみつ推しは今日をもって卒業しますが、私の永遠の最推しは…蜜璃様以外考えられません!私のこの気持ちは蜜璃様おひとりだけのものです!」
丁度いいところにあった煉獄様の両手をパッと取り、ギュッと握りしめながら自分の気持ちをひたすら吐露し続けた。
言うだけ言って満足した私は
「今日は煉獄様のお陰で命拾いをしました。そして何より蜜璃様への愛を再認識することが出来ました!本当に、本当にありがとうございました!」
満面の笑みを浮かべながら、お礼の言葉を述べた。けれども、煉獄様は機関銃のようにしゃべり続ける私にすっかりと引いてしまったのか、何も答えてはくれない。
……ま、引かれてもいいか。だって私は私の推し活を心行くまで楽しむんだもぉん
フと、巾着に忍ばせてきたおやつの存在を思い出す。
「そうだ!煉獄様は、さつまいもがお好きでしたよね?」
「……あぁ…そうだが…」
「この間、さつまいもの飴を作ってみたんです。美味しく出来上がったので、よかったら持って行ってくださいな」
巾着袋の口を開き中を覗き込むと、飴が5つ入っていた。私はその5つ全部を取り出し
「どうぞ!なるべく早めにお召し上がりください」
依然として呆けた顔をしながら私を見ている煉獄様の大きな手のひらにそれらをのせ、落とさないようにギュッと握らせた。