第42章 推すのに忙しい私を押してこないで*煉獄さん
その時蜜璃様が私に掛けてくれた
"美味しい!やっぱりこのお店の味は美味しいわ!また食べられる日が来るなんて私とっても嬉しい!…あのね、美味しいご飯は私の生きる活力なの。だからありがとう!"
それらの言葉が、私の心に前を向く力をくれた。
食事を食べ終え帰ろうとしている蜜璃様に
"…っどうか…どうか私を甘露寺様のお屋敷で働かせてください!甘露寺様と違って何も出来ない私だけど…甘露寺様にお食事を食べてもらうことで…甘露寺様のお力になる事で、両親を亡き者にした鬼と戦いたいんです!私を…甘露寺様と共に戦わせてください!"
頭を下げ懸命にお願いした。
他人である蜜璃様に、敵討を委ねるようなこんなお願いはあまり良いものとは言えないのかもしれない。けれどもその時の私は、どうしてもそうしたいと思う気持ちを抑えることができなかった。
蜜璃様は何かを思案するように黙って私を見つめた後
"……いいわ!一緒にいきましょう!"
満面の笑みを浮かべ、そう言ってくれたのだった。
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「今日は伊黒様とどちらに行かれる予定なんですか?」
さりげなく、尚且つ自然に、私は今日の蜜璃様と伊黒様の行き先を聞きださんと空になった食器を下げながら尋ねた。
「今日はね、鰯庵に行くの!なんでも、期間限定、サツマイモを練り込んだお団子を発売してるらしいわ!あそこは甘味も軽食も美味しいし、私がたくさん食べても驚かれることもないからとっても居心地がよくて」
…なるほど、鰯庵ならお外のお席で食べるはず!蜜璃様と伊黒様の様子を観察するのには…最高の場所じゃないっ!
そんな邪な考えを少したりとも顔に出さず
「鰯庵。あそこは軽食も甘味も、何を食べてもはずれがないですからね」
ひょいひょいと空になったお皿を1枚、また1枚と重ねていく。