第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有
顔を上げ七光先輩の方を見ると、何とも言えない顔をしていて少し面白かった。
「でもですね、私個人としてはとっても感謝していますが、七光先輩のその実力に伴わない態度はどうかと思います。そんなことを続けていてると、いつまで経っても下はついて来てくれませんよ?それじゃあ後々自分の首を絞めることにしかなりません。ですからまだやり直せるうちに、自身の行動を改めるべきです」
今日この会社を去るのだから怖いものなどないと、私は言いたいことを全て言い尽くし
「それでは。お元気で!」
七光先輩に満面の笑みを浮かべながら最後の挨拶を済ませ、会社の出入口へと立ち止まることなく向かった。
後々、私は一部では非常識な新入社員、その他では七光先輩の伸びに伸びた鼻をへし折ってくれた強者としてしばらく話題の中心になっていたらしい。
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「実弥さん実弥さん!ここなんてどうでしょう?」
「あァん?どれだよ?」
憧れていた某ウエディング雑誌をペラペラとめくり、気に入ったページの一枚を実弥さんに見せてみる。
「へェ…綺麗なところじゃん」
「でしょでしよ!?駅近で立地もいいし、小規模な会場で、挙式、披露宴が挙げられるのは1日1組だけなんですって!」
雑誌のページに載っているのは、バージンロードがガラス張りになっており、その下を花びらが散りばめられた水がサラサラと流れている、"森の中の教会"という表現がぴったりな綺麗な会場だった。
「なら早速明日にでも電話かけてみるかァ?」
「え?いいんですか?」
「あァ。結婚式っつゥのは女の一大イベントだろう?すずねの父ちゃんと母ちゃんにも、お前の晴れ姿を見せてやれる最大のチャンスだ。だからお前がここだっていう場所が1番だァ」
実弥さんはそう言いながら、雑誌のページをじっと眺めていた。
…この人は…どうしてこんなにも素敵なの…!
どうしようもない愛おしさが込み上げてきて、私は隣に腰掛けた実弥さんにドンと勢いよく抱きついた。