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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第8章 炎の音に包まれて【音好きシリーズ】※裏表現有


その顔に、胸が締め付けられる。

「…っ話せば………抱いてくれますか…?」

私のその言葉に、炎柱様はパッと視線を逸らし

「っ話しの…内容に…よる…っ…クッ…我慢だ…!」

頬を赤らめそう言った炎柱様のお顔に、こんな状況にも関わらず私の胸はキュンと高鳴る。









「…すると…太鼓女郎として柏木が…遊郭に潜入し…宇髄の妻たちの情報を…集める…と?」

はぁはぁと息を荒くしながら紅潮した顔でそう言う炎柱様があまりにも辛そうで、精力剤を無断で飲ませたことを思わず後悔してしまう。

「はい。あの…私…経験が無いので…天元さんが、潜入したければ……せめて経験をして来いと…」

「それで…その相手に…俺を選んだと…言うわけか…」

「…はい」

炎柱様は眉間にグッと皺を寄せ

「…何故…俺を選んだのか…正直に…答えて欲しい…」

そうまるで乞う様に言った。


私はそう聞かれた時、なんと答えるべきかとずっと考えていた。

私に好意を示してくれるから。
口付けを交わした(奪われた)相手だから。
共に外で食事をした仲だから。

どれも違うと思った。

「…炎柱様………だから…」

その一言が全てだった。

"炎柱様が好きだから"

そんな風に言えたらどんなに良いか。

でも私には言えなかった。

「…それは…どういう…意味だ…?」

「…言葉のままです。…もういいですよね」

私は炎柱様の首に腕を回し、グッと自分に引き寄せ

「…もう…我慢しないで…?」

ちゅぅ

3度目の口付けを、再び自ら交わした。

経験の全く無い私だが、恥ずかしながら知識だけは無駄にある。なぜならマキオさんと須磨さんがあまりにも無知な私を心配し、色々教えてくれたからだ。

授かった知識を総動員して、私は炎柱様を誘惑しようとしていた。

ちゅっ…ちゅぅ…

角度を変えながら、啄む様な口付けを繰り返す。

なのにだ。

「…その答えでは…柏木に…手を出すことは…出来ない…っ!」

そう言って炎柱様は私から顔をパッと晒した。

「…っどうしてです!?…そんなに辛そうなのに…私を…私で…解消してくれていいんです!…私がそう仕向けたんです!」

そう私が言っているのにも関わらず

「…自己処理くらい…出来る…っ」

炎柱様は身体を起こし私から離れて行こうとしてしまう。

…嫌っ!
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