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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有


「…流石、1フロアに5席しかない高級レストランですね」

「だろォ?これから社会の荒波に揉まれるお前への激励と、1週間踏ん張ったご褒美だァ」

「…っもう!実弥さんったら飴と鞭の使い方がうま過ぎて私の情緒が追いつきません!」


私は頬に添えられている実弥さんの手に自らの左手を重ね、その感触をより確かなものにしようとすりすりと頬ずりをする。そんな私の発言に実弥さんは”ばかがァ”と呟くように言った。そして


「…俺だって早くお前と夫婦になりたいと思ってんだァ」


先程の呟きよりも更に小さな声でそう言った。その言葉と表情で


「…っ……はい」


実弥さんの気持ちは十分私に伝わった。

もうしばらくこの甘い雰囲気を楽しんでいたいところではあったのだが


「ほら。そろそろ離せェ。人が来ちまうだろォ」


私の背後の方を見ながらそう言った実弥さんに、隣のテーブルに(隣と言える距離感ではないが)食事が運ばれてきていることが伺い知れる。


「…はぁい」


渋々ながらも重ねていた手を離すと、実弥さんの手はあっという間に元の場所へと戻って行ってしまう。私はその手をジッと見つめた後、実弥さんの三白眼へと視線を移し


「今日は…私の家に泊まってくれるんですよね?」


甘えた声でそう尋ねる。すると実弥さんはニッと笑みを浮かべると


「今日はなぁ、このホテルの部屋取ってあんだよ」


と、実際の年齢よりも随分と若く見える笑みを浮かべながら言った。


「っ本当ですか!?嬉しい!…あ、でも私…下着とか持ってきてないですけど…」

「好みかわからねェが、新品買って用意してあらァ」

「わっ!流石実弥さんです!」 


まさか実弥さんが私のために下着を買ってくれる日が来るとは、ある意味夢のように嬉しい出来事だ。

けれどももう一つ、私には…というよりも、私たちに必要なものがきちんとあるのかが気になった。


「…実弥さん実弥さん」


実弥さんに向けちょいちょいと手招きしながら小声でその名を呼ぶと


「なんだァ?」


実弥さんは私の意図を汲んでくれたのか、その顔を寄せて来てくれた。

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