第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有
自分の薬指でキラリ輝く婚約指輪を眺めていると”あぁ私は実弥さんのものなんだわ…”と、途方もない幸せを感じることが出来る。それでもこれを付けていられるのは週末だけで、平日は何もはめていないさみしい薬指に戻さなければならない(実弥さんにそうするようにと口酸っぱく言われてしまいしぶしぶ承諾した)。
会社の人にどう思われようが関係ない!
以前はそう思っていた私だが、5日間の出社を経て、会社という組織で生きることはそう簡単ではないということを理解した。試験をクリアし、幸運にも入社をすることが出来た希望の会社なのだから、仲良くなった同期と共に頑張って働きたいとは思っている。
それでも、そのせいで不死川の姓を名乗る時期が遠退くのは不満で仕方なかった。
1日でも長く実弥さんの妻として過ごしたいと思うのは…そんなにいけないことなのかな…?
心の中でそう思いながらも
「………すみません」
これ以上実弥さんを困らせるべきではないと謝罪の言葉を述べた。それからグラスに残っていたシャンパンを一気に喉の奥に流し込み
「…っこのシャンパン、本当においしいです!」
ニヘラと実弥さんに笑いかけた。すると
「お前なァ、作り笑いが昔から下手くそ過ぎんだよ」
「…っ!」
実弥さんが眉の両端を垂らし、優しい表情を浮かべながら私の左頬に右手で触れてきた。その表情は、誰がどう見ても私のことを”愛おしい”と思ってくれているそれで
「…っ…だめです!その顔反則!」
先程僅かに落ち込んでいたはずの私の気持ちを、いとも簡単に幸せな色に染め上げてしまった。
「そうかいそうかい。お前のその反応にも流石になれたぜ」
実弥さんはそう言いながら親指の腹で私の頬をくすぐるように優しく撫で続ける。
「…お…お外で…そんなお戯れ…よいのでしょうか…?」
「あァん?テーブルとテーブルの距離がこんだけ開いてて暗けりゃ、誰も自分たちの席以外のことなんて気にしやしねェよ」
その言葉に視線を周りへと向けてみると、確かに自分の席以外の話し声なんて聞えやしないし、姿もほぼ見えないに等しい。