第39章 あなたの声は聴こえてるよ✳︎不死川さん※微裏
「悪い?なんで?私が誰と関係を持とうと…不死川には関係ないじゃん。だって私たち、ただの同期でしょ?」
にっこりと、嫌みにも取れそうな笑みを浮かべながらそう言った私に対し
「………ただの同期だァ?」
不死川が発した言葉はどこか惚けて聞こえるものだった。
……何その意外な反応
いつもの口喧嘩に発展し喧嘩別れをするか、口喧嘩に発展するまでもなく見捨てられるように関係に終わりが来るか…どちらかと思っていたのだが、不死川の反応はそのどちらでもない。
「……」
どうしていいのかわからず、悩まし気に眉間にしわを寄せながら私に視線を寄越してくる不死川を見返す。
「……」
何かを思案するように私の目をじっと見続ける、羽織までしっかりと(よく見たら草履もはいたままだ)身にまとっている不死川と、素っ裸の私。
何この状況
なんとも言い難いこの状況に耐えきれず
「…ねぇ…なんか言ってよ」
私は思わずそう言ってしまう。不死川は何らかの結論にたどり着いたのか、その眉間からしわがフッとなくなり
「成程なァ」
独り言のような声量でそう言った。
「…何?成程って…一人で勝手に納得しないでよ」
不死川は私のその言葉に
はぁぁぁぁぁぁ
私の腕を強く掴んでいた右手を離し、離したそれで自身のふわふわな前髪をクシャっと乱した。
なんとなく解放された左腕に視線をやると
「…わぁお」
不死川の手の痕がくっきりとついていた。
どんだけ強く掴んだのよ
そんなことを考えていたが
「…っ!」
顎をすくわれ
「一度しか言わねェからその耳かっぽじってよく聞けェ」
先程とは異なり、僅かに緊張しているようにも見える表情をしながら私の目をジッと見つめてきた。
不死川のそんな様子に”もしかして”と期待してしまいそうになる心をグッと心の奥に沈める。
「……何さ」
平静を装いながらそう言った私に告げられたのは
「俺はお前のこと、ただの同期だと思っちゃいねェ」
私が欲しいと望んでいた言葉だった。