第39章 あなたの声は聴こえてるよ✳︎不死川さん※微裏
何から聞けばいいのか戸惑っている間に
「のこのことあんな野郎について来てよォ…一体どういうつもりだァ?」
大きく見開かれた三白眼が、互いの額がぶつかってしまいそうな程の近距離から私のそれを睨みつけてきた。
「……どういうつもりって…不死川のお察しの通りだと思うけど?誘われたからここに来たの。…いつも不死川としてることと一緒」
自分が脅されるような形でこんな場所でこんな格好をしていることを知られたくなかった。もしそれを知られてしまえば、不死川は間違いなく私が何故こんな行動をとったのか問い詰めてくる。そうなれば私の秘めた思いに気が付かれてしまうかもしれない。
なるべく軽い口調で、なんでもない事のように私は答えた。そんな私の言葉と様子に、不死川の米神にピキッと筋が入った。
「はァ?じゃあなんだァ?お前はあの男に誘われて、好き好んでついて来たと…そう言うことかァ?」
「…そうだけど……何か問題でもある?」
今回の出来事でよくわかった。
私の”不死川の側にいたい”と思う気持ちが、不死川の立場を悪くしてしまうかもしれない…ということだ。
今まで気にもしたことがなかったので気が付いていなかったが、あの男の口ぶりからすると、少なからず私という人間が不死川のもとに出入りし、男女の関係を持っていると認識している人間がいる。
きっと不死川は
んなもん気にしねェ
とか言って一蹴してしまうだろう。でも私は自分のせいで、ただでさえ誤解されやすい不死川実弥という人間が、更に誤解されてしまうことは嫌だ。そんなことになるのであれば、やはりこんなぬるま湯につかるような関係は終わらせた方がいい。
元々、不死川の花柱様に対する気持ちを知った時そうするつもりだったのだから、その時期が…とうとう来たのだと思えばそれでいいんだ。
「…不死川とするのもちょっと飽きて来てさ…他の男も知ってみたいなってそう思ったの。悪い?」
「はァ!?悪ィに決まってんだろうがァ!!!テメェどんな頭してんだァ!?」
不死川の米神の筋は増え、声も更にドスを増した。