第39章 あなたの声は聴こえてるよ✳︎不死川さん※微裏
「っちょっと待って!どうしたの!?」
そんな不死川の姿を見るのは初めてのことで、私は慌てて不死川を追いかけた。
「ねぇ!待ってよ!何かあったの!?」
速足で歩いていく不死川を小走りで追いかけながらそう尋ねるも
「お前には関係ねぇ…さっさと帰れェ」
私の方など少しも振り返ることなく不死川はそう言った。もちろんそんなことを言われて納得が行くはずもなく
「…っそんな顔して関係ないなんて言われても…放っておけるわけないじゃん!私たち二人きりの同期でしょ!?」
ガッと不死川の左腕を両手で掴み、何とかその歩みを止めようと引っ張った。不死川は脚を止めると、怒りを耐えるような、それでいて酷く悲しげな表情で私のことを睨みつけてくる。私はその目力に負けないようにジッと不死川の三白眼を見つめ返し
「お願いだからそうやってなんでも一人で抱え込まないでよ!私に出来ることがあったら何でもするから…頼ってよ!!!」
半ば叫ぶようにそう言った。
「………」
「………」
しばらく無言で見つめ合った後
「…か……せろォ」
「え?」
不死川が小さな声で何かを呟いた。けれども、その声は普段聞き慣れているあの怒鳴り声とは程遠い小さなもので、聞き取ることが出来なかった。
私は不死川にぐっと身を寄せ
「ごめん聞えなかった。もう一度言って」
今度は聞き逃すことがないよう不死川の口元に左耳を近づけた。すると聞こえてきたのは
「抱かせろ」
「…っ!!!」
その一言だった。
私はあまりの衝撃で言葉を発することが出来ず一瞬固まってしまった。それでもすぐ我を取り戻し
「うん。いいよ」
何の躊躇もなくそう答えていた。
そんな私の答えに、言い出した本人であるはずの不死川が、目が零れてしまいそうなほど大きくそれを見開き固まった。けれども次の瞬間
グッ
と、私の腕を引っ張り、一度も足を踏み入れたことのなかった部屋…不死川の部屋へと連れていかれた。