第38章 呼び方なんてどうでも…よくない!*冨岡さん
それでも
「…たまには…っ…言ってくれてもいいじゃん…」
そう思ってしまうことはいけないことなのだろうか。私が表現する10分の1でいいから義勇にも気持ちを表現してもらいたいと思うことはおかしな事なのだろうか。
手を洗い、寝室に放ってある部屋着を手にした私は再びリビングに向かい
「疲れたからシャワー浴びてそのまま寝る」
不機嫌な様子を隠すことなくそれだけ告げ、宣言通りシャワーを浴びに浴室に向かった。私はシャワーを終わらせ、スキンケア、ヘアドライ、それから歯磨きと最低限のことを済ませ、最後に水を飲もうと仕方なしに義勇のいるリビングに向かった。
まっすぐに冷蔵庫へと向かいミネラルウォーターを手にした私に
「何かあったのか?」
いつの間にそこにいたのか、背後にいた義勇がそう尋ねてきた。
何かあったのかじゃないし…私がどんな気持ちであんなこと聞いたのか少しは考えてよ
そんな文句を心の中で言いながら適当なコップを手に取り水を飲む。それから乱暴に使い終わったコップをシンクに置くと
「別になんでもない。じゃ、おやすみ」
吐き捨てるように言った私は義勇の横をスルリとすり抜け寝室へと向かった。
ベッドに入りしばらく待ってみるも
…やっぱり来ない
話を聞きに、様子を窺いに来てくれるんじゃないかと僅かな期待を抱いていた私だが、残念ながら義勇が来てくれる様子はない。
”愛されていない”
義勇の行動がそれを肯定しているような気がして
「……義勇なんか…嫌い」
小さく丸まり自分を抱きしめるようにしながら目をつぶった。
お酒が入っていたせいかそのまま朝まで眠ってしまい、朝起きると隣には義勇がぐっすりと眠っていた。
何も気にしていなさそうなその寝顔に(眠っているのだから当たり前なのだが)虚しさが溢れてくる。
ベッドから抜け出しリビングに向かうと、買っておいた菓子パンとカフェラテを飲み、さっさと自分だけ朝ご飯を済ませてしまった。それから洗濯機を回し、回している間に身支度を整え、動きを止めた洗濯機から洗濯物を取り出し干していると
「出かけるのか?」
まだ眠たそうな声の義勇が声を掛けてきた。