第38章 呼び方なんてどうでも…よくない!*冨岡さん
だからこそ田中さんの言葉が私の心にグサグサと突き刺さった。
…あぁ…もう帰りたい…
そんな私の願いを聞き入れてくれたかのように
「ラストオーダーのお時間になりましたがお飲み物の注文はどうされますか?」
と、タブレットを片手に店員さんが現れた。私はもちろん飲む気になんてなれず、周りの注文をまとめ店員さんに伝える役割を担った。田中さんはまたしても追加のカシオレを頼もうとしていたようだが周りに阻止され最終的には烏龍茶をオーダーしていた。
"あのですね〜"
田中さんは完全に私と義勇の話には興味が失せたようで、周りにいかに自分がモテて彼氏に愛されているかを熱弁している。
すると偶々隣に座っていた子が
「あの子、本当なんなんでしょうね?あんな子の言葉、気にしない方がいいですよ。私も前に、あの時代遅れのぶりっ子女に色々言われたことありますもん」
と、眉をひそめながらまるで自分のことのように怒ってくれた。
「…ふっ…時代遅れのぶりっ子女…何そのパワーワード…っ!」
あまりにも的確且つ毒々しいその名称に、私の心を覆っていた靄が晴れていったような気さえしたのだった。
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「ただいまぁ」
鍵を開け、パンプスを脱ぎそろえ玄関へと上がる。そのままリビングに行くとソファーに座りじっとテレビを見ている義勇の姿がそこにはあった。
「ただいま」
先ほど玄関でも”ただいま”を言ったが、私はもう一度、義勇の方を向き、義勇の顔を見ながら”ただいま”を言った。なのに義勇は
「…ん」
私の方なんか見ず、たったのその一言。
はい不満1ぃ!
頭の中で手のひらサイズの自分がいらぬカウントをしてくる。
私が義勇よりも後に帰ってくることなんて滅多にない。だから基本的にはいつも私が義勇に”おかえり”を言っている(義勇はその時ぼそりとだが一応”ただいま”を言ってくれる)。