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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第38章 呼び方なんてどうでも…よくない!*冨岡さん


相当酔いが回っているせいか、はたまた元々空気をあまり読まない…読めない性格なのか、私たちの様子に気が付くことのないその子はさらに口を開く。


「確か私立学校の教師でしたっけ?見た目がタイプで収入がまぁまぁいいからってぇ、愛してくれない男となんか付き合わない方がいいですよぉ?女は愛されてなんぼですからぁ」


ケラケラとそれはまぁ可笑しそうに言ってくるその子はいったい私と義勇の何を知っているというのか、何とも勝手なことを宣っている。

そしてそれだけ酔っていてまだ飲むつもりなのか、"カシオレのおかわりお願いしまぁあす!"と、遠くにいる店員さんにご機嫌な様子で、グラスを持っていない方の手をピンとあげながら追加の注文をしている。


「…ちょ!田中さん飲みすぎ!柏木さんにものすごく失礼なこと言ってるから!」


一番最初に我を取り戻した同僚の男の子が、カシオレ女こと田中さんを諫めてくれた。けれども


「私の彼氏は、とっても心が広いし?本当は嫌だけど、私の為にって一生懸命我慢してくれてるから今日こうやって会社の飲み会に参加できてるのぉ。でもでも、毎回心配だからって、悪いから来なくていいよって断っても迎えにきちゃうのぉ!私ったら本当愛されすぎて困っちゃうぅ!」


田中さんは諌めてくれている彼の言葉も、私の冷めた視線にも気が付いていないのか、あるいは全く気にならないのかは不明だが、呂律の怪しい口調でしゃべり続ける。


この子…勝手にベラベラとなんな訳?私が未だかつて義勇との話を自ら進んでしたことあった?愛されてなくて寂しいなんて話したことあった?


そんな風に思うものの、田中さんの発する言葉の数々に、全く身に覚えがないかと聞かれればそうでもない。

私は義勇のことが昔も今も変わらず大好きだ。その気持ちを口に出して伝えるし、仕事で疲れたとき、後ろから義勇の背中に抱き着いてスンスンとその匂いを嗅ぐとものすごく癒される。義勇はいつもそんな私の行動を黙って受け入れてくれる(ごくたまに鬱陶しがられる時もあるけど)。

でもたまに…いや、最近では頻繁に、義勇が私のことをどう思っているのか、わからなくなる時がある。

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