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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第38章 呼び方なんてどうでも…よくない!*冨岡さん


出会ってから何年、付き合い始めてから何年、同棲してから何年経過したのか…パッと考えてもわからないほど長い間、義勇と一緒にいる。寡黙で冷静な義勇は、感情的な私とは全く正反対で、義勇の意見でハッとさせられたり、きちんと考えて行動できることも多々ある。

そんな冷静寡黙な義勇のことが私は大好きだし、事あるごとにその”好き”の気持ちを伝えるようにしている。私の重めの愛情を受け止めてくれる(ん?受け流されてるのかな?)だけで幸せだと思う。そう…思っていた…んだけど。


…義勇って…本当に私のこと好きなのかな…?


私の頭の中は、そんな疑問で埋め尽くされてしまうようになった。なぜそんな疑問が私の頭を埋め尽くすようになったか…きっかけは会社の飲み会の際、とある会社の後輩に言われてしまった言葉にある。







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「私の彼氏ぃ、私のことが大好き過ぎて…ちょっと困ってるんですぅ」


彼氏の入れ替わりが激しいともっぱら噂の同部署の後輩が、カシスオレンジを片手にくねくねとしながら私に向けそんなことを言ってきた。


…全然困ってるように見えないんですけど


内心そんな毒を吐きながらも


「へぇ。いいじゃないですか。羨ましいです」


愛想笑いを貼り付け興味ありげな声色でそう答えた。


「えぇ?やっぱり柏木さん、私が羨ましいですか?」


にっこりと綺麗な笑みを浮かべ、心なしか私を馬鹿にするように言ってきたその子の様子に、最後の一言が余計だったと激しく後悔した。かと言って


”やっぱり羨ましくありません”


なんて角の立つことは口が裂けても言えるはずがなく


「…きちんと愛情を示してもらえるのって、嬉しい事ですからね」


若干遠い目をしながらも、大人の対応をさせてもらった。まぁそんな大人の対応が更に悪かったのだろう。


「…そんなこと言うなんて…柏木さん、よっぽどあのイケメン彼氏に愛されてないんですねぇ」


彼女が楽し気に発したその言葉に、私を含め、飲み会を楽しんでいた面々が一斉にその動きを止めた。

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