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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第36章 これから先の未来、ずっと一緒に✳︎不死川さん


「ここにはなぁ、999本の向日葵が植えてあるんだとよ」

「999本?なんでまたそんな中途半端な?」

「ここの土地の持ち主…あのプレハブ小屋にいた人なァ、旦那と一緒に花農家を営んでたんだがァ、数年前に病気で先立たれちまったんだってよォ」

「……そうなんですね」


その話が、なんだか前世の実弥さんと自分と重なり、切なさがこみ上げてきた。


「で、花農家もやめちまってふさぎ込んでたんだがァこのままじゃ旦那も安心して成仏できねェと思って、旦那が特に好きだった向日葵を植え始めたんだってよ」

「…999本?」

「あァ。仕事ってわけじゃァねぇから…毎日数数えては、999本になるようにしてるんだと」

「…そうなんですね」


そう返事をしながらも


…何で…あえての999本なんだろう


私の頭にはそんな疑問が沸き上がっていた。




「”何度生まれ変わっても私はあなたを愛します”」




「…っ!」


耳に届いた実弥さんの言葉に、私は目を大きく見開き驚いた。


「999本の向日葵の花言葉だァ。天国にいる旦那に向けたメッセージだとよ」

「…そう…ですか…」


やはりそれも、かつての自分の気持ちと重なりあっているようで、胸がぎゅっと締め付けられた。


「馬鹿がァ…なに辛そうな顔してんだよ」


実弥さんはそう言いながら眉間に軽く皺を寄せ、困ったような笑みを浮かべた。


「…だってぇ…」


過去の自分と重なったとは口にすることが出来ず、私は曖昧な笑みを浮かべてしまう。すると


「すずね」


実弥さんが私の方へと身体の向きを変え、真剣な声色で私の名を呼んだ。

そんな様子に

ドキッ

と、私の心が大きく跳ね、実弥さんに倣うように自然と身体の向きを変えてしまう。


…っ…これって…もしかして…!


恋人が花束を持ち、真剣な面持ちで自分のことを見つめている。その先に待つ出来事なんて、いくら鈍い私にでも想像がついた。

実弥さんは視線を左右に揺らした後、私の目をじっと見つめた。私の胸はその目に見つめられただけで、この上ない幸福感に包まれ、鼻の奥がツンとしてきてしまう。

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