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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第36章 これから先の未来、ずっと一緒に✳︎不死川さん


「ほら。降りるぞ」


実弥さんはそう言うとシートベルトを外し運転席の外へ出た。


「あ!待ってください!」


私も慌ててシートベルトを外し、車の外に出る。


…ここ…なに?何も…ないみたいだけど…


助手席を降り改めて周りの風景を見てみると、周りは緑ばかりで観光地という雰囲気は全く感じない。唯一ある建物…プレハブ小屋という言葉が相応しい建物の中に中年くらいの女性が1人いるだけだった。


「実弥さん。ここってなんですか?」


背後に立っていた実弥さんの方に振り返りそう尋ねると


「…いいから…俺に着いてこい」


実弥さんは珍しく歯切れの悪い様子でそう言った。そして駐車場のすぐそこにある小高い丘がある方へ、ポケットに両手を突っ込みながら歩き出した。


「あぁ!待ってください!」


その背中を慌てて追いかけ実弥さんの左腕にギュッとしがみつく。


…なんか…やっぱり…実弥さんちょっとおかしいな


チラリと右斜め上にある実弥さんの顔を盗み見ると、実弥さんは口を真一文字にしながら正面をじっと見つめていた。それは前世を含めてもあまり目にしたことのない表情で、どうしても気になってしまい"何かあったんですか?"と尋ねようと口を開きかけた。けれども


「…車にスマホ忘れたァ…悪ィが先行ってろォ…」


実弥さんが横目で私をチラリと見ながらそう言った。そしてポケットに突っ込んでいた手を出すと、私の身体をやんわりと引き剥がした。


「それは別にいいですけど…先い行けってどこに行けばいいんです?この先に何かあるんですか?」


ここが一体どこなのか、何なのか、そしてこの先に何があるのか全くわかっていない私は首を傾げ実弥さんにそう尋ねた。


「…いいから先に行けェ。丘を上がりきりゃァ何があるかわかる」


実弥さんはそう言うとフイッと私から視線を外し、車の方へと歩いて行ってしまった。

1人ポツンとその場に取り残されてしまった私は


「…丘の上に行けばわかるなんて…もっとはっきり言ってくれればいいのに。本当、変な実弥さん」


どんどん小さくなっていく実弥さんの背中を見つめながら誰に言うでもなくそう呟いた。

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