第35章 年下幼馴染は私より何枚も上手✳︎無一郎君
「っとにすずねは子どもっぽいんだから。6歳も年下相手にそんな怒んないでよ」
「…っだって…有一郎が意地悪言うから…っていうか、私が子どもっぽいんじゃなくて、有一郎と無一郎が落ち着きすぎなだけ!二人とも高校生らしさが無さすぎ!」
「はいはいわかったよ。で、話の続きね。今日の対局相手を見てみなよ」
有一郎はそう言ってテレビの中にいる無一郎の対局相手を指さした。私は、有一郎の言葉の通り、無一郎の正面に座っている対局相手に視線を寄こす。
「…見たけど、あの人が何?」
「歳、いくつくらいだと思う?」
「…歳?」
有一郎にそう言われ、じぃーっとテレビに映っている無一郎の対局相手を観察してみる。
…目じりに…皺があるし…ちょっと…白髪もあるし…うちのお父さんと同じ位かな?となると…
「…40歳…くらいかな?」
私が出したその答えに
「ま、その位だね」
有一郎はそう答えた。
だから何だっていうの?
そう聞きたいところではあったが、さっさと結論にたどり着きたくて、その言葉をグッと飲み込む。
「俺と無一郎はプロの棋士になって3年ちょっとだよ?あの対局相手は10年…ほかの大会参加者も少なくとも5.6年くらいはプロ棋士としてこうやって大会に参加してきたはず。そんな人たちが、俺たちより勝数少なかったらどの面下げてプロを名乗ってんのって聞きたくなるよね?」
「…確かに…」
「勝数は俺も、無一郎も今回の対局相手に劣るけど、”勝率”は俺たちの方が勝ってるよ。今回の大会、最初から無一郎の優勝で間違いないって…ネットにも書き込まれてたしね。優勝予想、見なかったの?…将棋に興味のないすずねが見るわけないか」
有一郎はそう言って、残っていた半分のクッキーを一口で食べた。
”最初から無一郎の優勝で間違いない”
有一郎の口から紡がれたその衝撃的事実に
「…っ何それ!?私…無一郎に騙されてたってこと!?!?」
私は驚愕した。