第7章 その音を守るよ-後編-【音好きシリーズ】
あれだけ私が失礼な態度を取ったにも関わらず、炎柱様はちっとも気にする様子もなく顎に手を当てふむふむと1人納得している様子だ。
「先程泣いていたのもその思い違いが原因か?」
「…っ泣いていません!」
「子どものような嘘をつくんじゃない」
「…っなんです思い違いって!?私のこと馬鹿にしてるんですか!?」
「馬鹿になどしていない。君は少し落ち着いた方が良い」
「落ち着いてます!」
「そのどこが落ち着いているんだ。君は、戦っている時はあんなにも冷静なのに、普段は子どもっぽいんだな。そんな所も可愛らしいがな!」
「…はい?」
今のは何かの聞き間違いだろうか。
「可愛らしい…?」
「うむ」
「私がですか…?」
「うむ。君がだ!」
この人は一体何を言っているんだろうか。
「柏木。俺は君に感謝をしてはいるが、同じ位腹を立てている。何故だかわかるな?」
急に話が変わり戸惑うも
「…退避命令を無視したことですよね?」
すぐにその答えに至る。
「わかっているなら何故あの時命令を聞かなかった」
「その件につきましては、あの時も言いましたよね?私には私の任務があると」
「君の任務とは何だ?無限列車の鬼の討伐ではなかったのか?」
「…違います。私はお館様に炎柱様の補佐をするよう命じられたんです。だから私はその"お館様の命令"に従っただけです!だから炎柱様に怒られる必要なんてありません!」
キッと炎柱様を睨みつけると、私の言葉に驚いているのか通常でも大きいと感じるその目をさらに見開いていた。
「お館様が柏木にそう命じたのか?」
「はい。天元さんにもそうしてくるようにと、命じられました。だから私は炎柱様の命令ではなく、お館様と、自分の師範の命令を優先ました。なのでお説教を受けるつもりはありません!」
どうだ参ったか!
心の中でそう思いながら、炎柱様をじっと見ていると
「ならば仕方ない」
と炎柱様は私を叱ることを辞めてくれたようだ。
「わかっていただけでなによりです!それで、報告書とはどれですか?」
炎柱様は一瞬キョトンとし、
「うむ!そうだな!報告書だ!」
と言いながらベッド横の机に置いてあった紙を私にズイッと差し出した。炎柱様の言い方からして、非常に怪しいと思いながらそれに目を通すと、ほとんど完成状態だった。