第35章 年下幼馴染は私より何枚も上手✳︎無一郎君
無一郎は私のその質問に僅かに眉間に皺を寄せた。
「なんでその事をすずねが知ってるの?」
「なんでって…お母さんがおばさんから聞いたって…」
私のその返事を聞いた無一郎は、眉間の皺を濃くした後
「あのお喋り…」
不機嫌そうな様子でそう言った。
はぁぁぁ
と、大きめのため息をついた無一郎は、私の鼻の頭をそのしなやかな指でツンツンと強めに突いてくる。
「すずねがあまりにも俺を男としてみてくれないからさ。すずねが同じくらいの歳の男と付き合ってるように、同い年と付き合ってみるのもいいかなって思ってさ」
その指先に、なんだか"怨み"のような物を感じてならない。
「痛い痛い!力強いから!」
「強くしてるんだもん。当たり前じゃん」
「…っもう!やめてよ!」
ガッと無一郎の手首を引っ掴み、鼻の頭を突いてくる指を阻止するも
パシッ
「…っ!」
無一郎が、逆の手で私の手首を掴み返してきた。そして再び私の目をじっと見つめてくる。
「すずねが幸せならまぁいいかって…思うようにしてた時もある。僕は気にならないけど、社会人であるすずねや、周りの、僕たちのことを知らない人たちからしたら、社会人であるすずねと高校生の僕は一般的には不釣り合いだからね」
「……」
そう。私もそれがきがかりだった。
社会人になってからの6歳差なんてざらにある。でも、現状私は"社会人"で、無一郎は"高校生"。万が一お付き合いすることになりました、なんてことになれば、互いに旧知の仲である両親の目はいいとしても、他人からの目は厳しいものになるに違いない。
ましてや無一郎は、雑誌やテレビ、それにSNSでも顔が知られている。6歳上の会社勤めの女と付き合っているなんて知られたら、私も、そして無一郎も、何を言われるかわかったもんじゃない。
だからと言って、何も悪いことなんてしていないのに、世間から隠れるようにコソコソと付き合うことはしたくなかった。付き合うのであれば、誰にも後ろ指刺されることなく、楽しい時間を無一郎と過ごしたい。
…でも…そんな勇気…私にはないよ
だから、自分の気持ちを…"無一郎のことを私も好きかもしれない"という気持ちを、認めることが出来ずにいた。