第35章 年下幼馴染は私より何枚も上手✳︎無一郎君
「僕は、物心ついた時からすずねのことがずっと好きだよ。歳上の幼馴染と思ったことなんて一度もない」
「…っ!」
「すずねは?この間まで僕のことを幼馴染としか見てなかったことはわかってる。だけど、今は違うよね?」
真剣な表情で、私から少しも目を逸らすことなくはっきり告げられたその言葉に、嘘をつくことなんて出来るはずがなかった。
それでも、自分の、自分でもまだはっきりとわかっていない気持ちを言葉にすることも出来ず、黙って一度だけ頷く。
「なら僕と付き合おう」
「…っ…!」
いつかは言われるんじゃないかと思っていたその言葉をとうとう言われてしまい、私は大きく目を見開き、ただただ無一郎を凝視してしまう。
「なにそのひどい顔。ていうかさっきから一言も喋ってないし。いつものお喋りなすずねはどこに行ったわけ?」
「…っ…だって…!」
「だって何?いつもあれだけお喋りなんだから、ちゃんと思ってること言ってよ。いくら昔からずっと一緒にいるからって言ってくれなきゃわかんないこともあるんだよ?」
「…わかってる!わかってるけど…」
「わかってるって何が?僕がどれだけすずねの事を好きかってこと?」
「…やっ…いや…あの…」
「じゃあなに?いつから僕がすずねのことを好きだったか?どこが好きか?」
「…そ…そうじゃなくて…」
そうじゃないと言いながらも、実はかなり気になるところではあった。
以前無一郎は同学年の彼女がいた時期があった。無一郎本人から直接聞いたわけではなかったが、私のお母さんが"むい君に彼女が出来たみたいなのよ!一体どういう風の吹き回しかしらね…"なんて不思議そうに言っていたことを鮮明に覚えている。
「無一郎…さ…」
「何?」
「…私のこと、ずっと好きだったって言ったけど…彼女いた時期あったよね…?」
私は、無一郎の様子を伺いながら恐る恐るその質問を投げかけた。