第35章 年下幼馴染は私より何枚も上手✳︎無一郎君
…よかった…離れてくれた…
そう安心したのもつかの間
カシャッ
「え?」
何やら聞き覚えのある音に、俯いていた顔を上げると、無一郎のスマートフォンのカメラのレンズと目があう。
カシャッ
そして再び、あの音が鳴る。
予想外の無一郎の行動に呆気にとられ、何も言えずにいると
「ほら見て。こんなに頬っぺた赤くして。こんな顔しておいて、僕のこと好きじゃないって言える?」
そう言いながら無一郎は私に向けつい先ほど撮影した写真を見せてきた。
「…っ!!!」
見るつもりなんてなかったのに、視界に入ってきてしまったのは頬を赤らめ恥ずかしそうな顔をしている私の顔だった。
…なんって…表情を…!
もしその写真に写っているのが私以外の誰かだったら
"うふふ…可愛い顔しちゃって。よっぽどその人のことが好きなのね"
と言ってしまいたくなるようなそれだった。
「…やだ!そんなの消してよ!」
無一郎のスマートフォンを奪い取ろうと手を伸ばすが、私よりも背の高い無一郎に上へと手を伸ばされてしまえばどう頑張っても届きっこない。
「だめだよ。こんな可愛い顔してるのに。消すなんてもったいない」
「…っ!」
恥ずかしげもなくそんなことを平気で言ってくる無一郎と、無一郎の一挙一動にいちいち反応しワタワタしている自分。やはりどっちが年上なのかわかったもんじゃない。
「…っもう!いいかげん「すずねは、僕のこと嫌い?」…っ…!」
言葉を遮りそう尋ねてきた無一郎の瞳は心なしか悲しげにも見え、その問いに対し
「っ私が無一郎のこと、嫌いなわけないじゃん!」
私は慌てて答える。
無一郎はスマートフォンをポケットにしまうと、私の両肩にその手を置き、私の目をじっと覗き込んできた。
「すずね。この間も言ったけど、僕はもう子どもじゃない。次の誕生日が来れば18歳。結婚もできる歳だ。そろそろ僕のこと、きちんと見てよ」
「……」
無一郎のあまりにも真剣な様子に、はぐらかすことも、かと言って安易に返事をする事も出来ず、黙り込んでしまう。