第35章 年下幼馴染は私より何枚も上手✳︎無一郎君
"僕、すずね''のことが好きだよ"
"ありがとう。私も、無一郎のことが好きだよ"
"…ちょっと違うんだなぁ"
"何が?"
"まぁ今はいいや…今は、ね"
それから何年も経ち、私は24歳、無一郎は18歳を迎える歳になった。18歳目前の無一郎は、もうすっかり"男の人"と呼べる見た目になっており
"可愛い年下の幼馴染"
と呼べる見た目では到底なかった。
いや、見た目だけならまだいい。
問題は"中身"の方だ。
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「ほら!もうこんな時間!早く帰らないとおばさんが心配するよ!」
我が物顔で私の座椅子に座り、コーヒーカップを片手に優雅に本を読んでいる無一郎にそう声を掛けるも
「本当だ。もうこんな時間だ。危ないから、今日はここに泊まっていくことにするよ」
読んでいる本から少しも目を外す様子もなくそう言ってのけた。
「…っだめだめ!高校生が、親の了承もなく外泊なんて…そんなことは許可できません!」
歳上風を吹かせるようそう言ったが、内心私はとても焦っていた。
…無一郎が泊まるなんて…無理!絶対無理!…何されるか…わかったもんじゃないもん!
"抱き枕事変"があって以降(私が勝手にそう呼んでいるだけだが)、私は無一郎のことを幼馴染として見れなくなってしまった。
それまではこの家に泊めてあげることもあったし、お風呂上がりに無一郎がいても全く気にならなかった(なんならノーブラでいることもあった)が、あの出来事以降は一度もここに泊まることを許可していない。
…あんな"男"の顔を見せられて…意識しないなんて無理!
私の答えを聞いた無一郎は、不満そうに眉間に皺を寄せ座椅子からスッと立ち上がった。
「何でダメなの?前まで普通に泊まらせてくれたのに」
ゆったりとした動作で洗い物をしている私のところまで来ると
「…っ!」
私の両側に手をつき、洗い場と無一郎の身体で私の事を囲いこんだ。